2008年11月22日

兵士の手紙ときよしこの夜(其の参)

『富屋食堂』から『特攻平和会館』迄はタクシーで5分。だが、『富屋食堂』で妙に敬虔な気分になった私は、この間を歩くことを選んだ。
降りしきる雨の中、とぼとぼと歩いた。時に雨水に足を滑らせながら、ひたすらに歩いた。寒さがあった筈なのだが、到着したときには大汗をかいていた。
しかし、思えば歩きを選択していたが為に見えてきたものがあったのではないかと思う。特に、途中に数多く立っていた灯篭をひとつひとつ見ることが出来たのは大きな収穫であったと思う。このひとつひとつにどれ程の思いが込められているのだろうか・・・・・・。

知覧特攻平和会館
『知覧特攻平和会館』は、特攻隊(特別攻撃隊)の遺書や遺品、関連の品々を展示している場所である。ここでは様々な書籍も購入出来、遺書などは改めて読み返すことが可能である。また、検索システムにより遺書や隊員の情報を捜すことも出来る。

ジャプラン隼敷地内に入ると、先ず目に付くのは特攻機として使用された(ものを復元した)「ジャプラン」と「隼」であろう。現に私もこうしてカメラに収めたし、雨模様の天候にも拘らず記念写真を撮る方々を幾組も見かけた。
尤も、当の隊員たちにとっては、この記念写真は当惑する光景であるのやも知れぬ、と帰宅してから思った。当人達にとってはこの飛行機は自らを死出の旅路へと導くものであったのだから・・・・・・。

三角兵舎(外観)三角兵舎(内部1)三角兵舎(内部2)
『知覧特攻平和会館』の入口を潜る前に、その横に復元されている『三角兵舎』を見学した。これは、特攻隊員が知覧に到着してから出撃するまでの間の宿舎である。『三角兵舎』という名は、擬装の為に屋根のみを地上に出した形式による。
この兵舎を見たときに、その粗末な造りに呆然としたものである。確かに彼らは特進した将校であり、その前進は学徒出陣や少年飛行兵といった年若い兵士達ばかりであるのだが、せめて寝具なりともう少し調える訳にはいかなかったのか、と思われてならない。わら製の煎餅布団にバラック立ての掘っ立て小屋が終の棲家になったとは・・・・・・。

館内では、更に涙を誘われる展示を数多く見た。
冒頭の記事に書いた「兵士の手紙ときよしこの夜」で取り上げられた遺書も実物を見た。新妻を思い母に託した手紙、出撃間際の感慨を詩的な文章にした遺書の一項、幼い頃から一心に愛してくれた継母にどうしても口に出来なかった「お母さん」の言葉を遺したノートの走り書き。
特に最後の遺書はCDで聞いていた頃から涙したものである。私は女である故に遺された母上の気持ちに近くなっていたのであろう。わだかまりを洗って出撃した兵士よりも、「お母さん」の言葉を遺された母上の思いは如何許りであったか、と思う。そして、それ程迄に彼を愛した母上であれば、「お母さん」と呼ばれるよりも生きて帰ったその身を抱き締めたいと思われたに相違ない。

展示を見学していると、フィルムの上映がある旨館内アナウンスが入った。折角の機会である故、視聴覚室へと向かった。
そこで上映された記録も、涙無しには見ることが出来ぬものであった。中には『富屋食堂』で見たエピソードも1・2含まれていたようであったが、多くは寡聞にして知らぬことばかりであった。幼子を遺して出撃した兵士のカタカナ書きの遺書が読み上げられたときには、頬を滂沱の涙が流れた。あちこちでハンカチを取り出したり、嗚咽が漏れたりする様子も見受けられた。

様々な資料を見たり聞いたりしたところ、矢張り隊員のよりどころや最期の言葉は家族(殊に母上や子ども達)に宛てられているのだな、というのが印象に残ったものである。最後の最後は愛しい者への思い、そして彼らを守りたいという思いが隊員を出撃させていたのかも知れぬ。

とこしえにやすらかにこれら2体の銅像は、復元された特攻機と同じ場所に据えられた、特攻隊員と彼らを送った母上や奥様をモチーフにしたものである。隊員をモチーフにしたものは「とこしえに」、母上や奥様をモチーフにしたものは「やすらかに」という名が付いている。
「とこしえに」「やすらかに」どうぞ眠って欲しい。そして、このような哀しみがこの地球上の全てから無くなる様、自分に出来ることを考えてみたいと思ったものである。いみじくもさだまさし氏が『夏 長崎から』で言い続けた
「自分の大切な人の笑顔を思い出して欲しい。そして、その笑顔を守るために何が出来るかを考え、実行して欲しい」
という言葉の如くに。
posted by daydreamer at 22:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 鹿児島散策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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