2006年10月10日

最後の客

今さらながら、さだまさし氏のエッセイ集『いつも君の味方』(講談社)の文庫版を購入した。既にハードカバーで読んでいた本ではあったが、改めて読んでみると“挽歌”的な話の数々に、思わず胸が締め付けられ、涙が滲む思いがしたものである。

その中の一篇に「最後の客」というものがある。これは、さだ氏が嘗て贔屓にしており、今は廃業してしまった大阪のホテル『ホテルプラザ』の最後の営業日に宿泊した際のことが綴られたものである。
この話を初めて読んだときは、他の話に埋もれてそれほど印象に残る話では無かったように思う。が、改めて読んでみると、今だ存続しているとは言え、集客に苦戦しているハウステンボスがダブって仕方が無い思いがしたものである。

この中に、次のような一節がある。
「小出君、明日の晩までいるけど、食事の手はずは全部まかせていい?」
(中略)
「まさしさん、すいません。それがその・・・・・・」
「あ、わかった。どこも一杯なんだ」
「そうなんです。最後となると・・・・・・。とにかくこの一週間なにしろどこも満席満席で」
「皮肉なモンだよね。世の中ってそういうものなんだよ。元気なときには安心して見向きもしないくせに、なくなる、とわかった途端に群がってきて“残念だ、惜しかった”って口を揃えるんだよ」

これを読んだ瞬間ドキッとした。
確かに、私や似非ライターがインターネットに首を突っ込んだのはパソコンを初めて購入して半月経ったか経たないかというタイミングで、インターネットに繋ぐことが出来てから一週間も経たないうち、ではある。が、世間様では“ハウステンボス破綻”としてあちこちを賑せていた頃であることも事実である。そんな頃にのこのこと顔を出して、あろうことか下手な文章をこのように記載するなど、“「残念だ、惜しかった」と群がる”群衆となんらの違いがあろうか?

そして、胸を締め付けられたのは、ホテルのメインバー『マルコ・ポーロ』の最後の夜、
「(前略)本日お代は頂戴いたしません」
期せずしてどよめきのような驚きの声があがる。
「そこで、お客様に一つだけ、お願いがございます。いつもみなさまに可愛がっていただきました従業員達が、今夜だけ・・・・・・最後の晩だけは、およろしければみなさまと同じ客席に座って一緒にお酒を酌み交わさせていただくことをお許しいただけませんでしょうか」
ワーッと大拍手がわき起こる。
「ありがとうございます。どうか馴染みの従業員達に最後にひとこと皆様方の温かいお言葉をかけてあげてくださいませ。これからの人生の励みになると思います」

という箇所、それからその翌日のティー・ラウンジでのこと、
「まさしさん・・・・・・これ、ホテルプラザの淹れた最後のコーヒーです・・・・・・」
そう言ったきり後は言葉にならない。とうとう彼女は声を上げて泣き出してしまった。

という箇所である。
考えたくは無いが、もしも、我等が愛するハウステンボスがこのようなことになったら、顔見知りのあの人が、この人が同じ台詞を口にせざるを得ないことになったら・・・・・・。
何故か、こんなことが頭を離れなかった。そうは決してなることはあるまい、と思いつつも、あの人たちの顔が頭の中を回っていた。
そのとき、私はどんな顔をして、あの人たちと向かい合っているのであろうか?
この話を読んでいると、どうしてもそんな事ばかりを考えてしまった。払っても払っても払いきれぬ。今、何故にそのようなことを考えるのか?新施設『Kirara』も好調で夏の集客は前年度よりもアップしているというのに。
それとも、心の奥底に残っている不安がこの話を読んで爆発したのであろうか?

ハウステンボスは、絶対にこんなことにしちゃあならねぇよ。
最後に思ったのは、この言葉ただひとつだけであった。
その為にも(微力すぎるコトは百も承知であるが)出来得る限り足を運ばなければ、と思う。・・・・・・それが今年の“年間12泊”の言い訳であることもまた承知の上で。
posted by daydreamer at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | さだまさし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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