2007年10月28日

やさしさの、ひととき(其の拾壱)

『グラン・キャフェ』でカクテルを2杯飲み、『カフェ・デ・ハーフェン』に戻って来たのは23:30に程近い時刻であった。
「ラストオーダーですけど、どうします?」
と、Tさんに言われてしばし考え込む。頬杖をつき、頭にカクテルのメニューを思い浮かべながら人差し指でカウンターのデルフト焼をトントンと叩きながら・・・・・・。
時間が無いのだから、凝ったものや頭を使わねばならぬお任せのものは頼む訳にはいくまい。
片付けに時間を余計に食うから、シェイカーやミキシンググラスを汚すようなものも避けたい。
矢張りここはオーソドックスなビルドタイプ(グラスに材料を注ぎいれて混ぜ合わせるタイプ)のものが無難であろう。
ならば・・・・・・
「んじゃ、「ジンリッキー」ね」

10.7「ジンリッキー」Tさん、パッパと「ジンリッキー」を作り、出す。
これは、ソーダでグラスを満たすので、ジンジャーエールを使う「ジンバック」やトニックウォーターを使う「ジントニック」などよりもずっとサッパリと飲めるのが良く、好んであちこちで注文するカクテルである。このカクテルは、レモンまたはライムを使うのであるが、ここ『ハーフェン』ではレモンを使うタイプのものを出すらしい。

「Mさんにね、“ハウステンボスのチャン・ドン・ゴン”の話をしたらさ、自分はアンチ韓流だって言ってたね、アノヒト」
「まぁ、自分で言ってる訳じゃ無いですからね」
それは、まぁ、そうなのだが。
尤も、それでは話が面白くならぬので、Mさんとの会話の中では自分で吹聴しているかの如く話を膨らませてきたのである。
ここで、ふとシンクの方を見ると、新米君が洗いもの(片づけもの)をしている。
「そう言えば、2日も来てて全く話が出来なかったけど・・・・・・」
「そうですね」
「ここには何時から入ったの?前に7月に来たときにはお見掛けしなかったように思うけど」
「僕ですか?8月からです」
「あ、そうなんだ。だから見覚えが無かったんだな。で、お名前は?」
「Saです」
「Sa君ね。○○です。どうぞよろしく」
「こちらこそ」
S君のように物慣れている訳では無い。が、H君のように堅苦しさがある訳でも無い。言ってみれば、現代の若いおニイちゃんの典型のような印象を受ける、Sa君である。
未だ緊張が取れぬ様子であるが、もう少し慣れればかなり面白いキャラクターになりそうだと今から楽しみにしているものである。実際、愛想の良さはS君に匹敵する感じであるし。

ふと入口を見ると、ふらりとMさんが『ムーンシャワー』から戻って来た。
「Mちゃんは今日は居なかったね」
「ああ、『ムーンシャワー』には居ませんでしたね。あのコ『グラン・キャフェ』の方に居ましたから」
「あれ?そうなの??」
「そうなんですよ。私もビックリしました」
もしかしたら、一時クローズの話があった(が、実際はクローズされる期間は全く無かった)際に『ムーンシャワー』は待機のスタッフの人数を絞り込み、あちこち(主に『グラン・キャフェ』辺り)に応援に出しているのやも知れぬと思ったものである。
隣りで、席に座っている◆◆さん、話を聞きながらにこにこと飲んでいる。

すると、Mさんがついっと◆◆さんの隣の席に行き、話を始めた。内容までは定かでは無いが
「ここはテーマパークですからもっと法解釈も緩やかなものにして・・・・・・」
などと話をしているものの、かなり酒の入った状態である(しかも『ムーンシャワー』迄の階段を上り下りしているので余計に回っていたことであろう)為、既に呂律は回っていない。但し口調はやや強め、勢いも無くは無いので◆◆さん、笑みを浮かべながらも困惑した雰囲気は隠せぬ。
仕方が無いので、レジの前に居たTaさんに勘定のサイン(左手をメモや計算書に見立て、右手で何かを書くかの如くの手まねをする。左利きの場合は逆手になる)を送る。心得て、Taさん、さっと計算を済ませ、我々の前に勘定書が出てくる。
私が支払いを済ませて荷物をまとめている間に、Mさん、支払いをする。
「じゃ、また」
「はい、今日はありがとうございました」
などと挨拶をしてから店を出ては行くものの、心なしか足元が覚束無いような・・・・・・。この日の宿泊は『ホテルアムステルダム』であるのだから、部屋迄はそれ程でも無く辿り着いたとは思われるが。

「じゃ、私もこれで」
「はい、ありがとうございました。お休みなさい」
と、Taさんと挨拶をして席を離れた。
「それでは、どうもありがとうございました。失礼します」
「はい。じゃ、また」
と、これは◆◆さんと。
離れたところに居たTさんとは、海側の出口へ向かって歩き出したとき、言葉を交わした。
「ありがとうございました」
「はい、どうも」
「○○さん、次は何時になります?」
「12月」
「?」
「誕生月!」
「はい、判りました」
ドアを開けると、思いも寄らず月明かりが眩しい夜であった。

・・・・・・ところで、私の文章は誤解を招きかねぬと思われる表現があちこちに出て来るので、追記として“言い訳”をしておきたい。

この文章は“嘘では無いが真実とは程遠い”と呼ばれる文章の典型的なものである。
確かに書いた出来事は実際にあったものではあるが、話の流れを作る為に順番を入れ替えているところも多くあるし、また、それぞれの登場人物のキャラクターもかなり誇張した表現を使っている。
だから、一連の文章を読んだTさんは
「アタシ、これじゃヒール(悪役)じゃないですか」
と私にぼやいたくらいである。

実際のTさんは別に傍若無人に振舞っている訳では無く、むしろあちこちに気を使い、また、慣れぬバイトにあれこれと様々なことを教える教育係的な役割を請け負っていると思われる場面も数多い。
が、そう書いては面白くは無いので、特に面白そうな出来事を取り出してまとめている。これは、この文章が“読み物”として成立するように、との思惑によるものである。

この「Cafe・de・Haven Story」に限らず、「Vinotheque Story」にしても、新規に(とうとう)追加した「Grand Cafe Story」にしても“フィクション”では無いが“ノンフィクション”とも言いかねる文章であることを、最後にお断りしておく。
言ってみれば“ハーフフィクション”となるのであろうか?
故に、こちらの文章のイメージをそのまま持ってそれぞれの店に行くと、拍子抜けする部分もあるのではないかと思われる節が無いことも無い。
posted by daydreamer at 20:00| Comment(0) | TrackBack(0) | Cafe・De・Haven Story | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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