2007年12月23日

ペース配分・・・・・・(其の漆)

『ジャックポット』を出てAさんと連れ立って入った『パロット』であるが、この日はカウンターの入口近くの端にカップル客が一組居るのみ、カウンターの中に居たのもTさんただひとりでバイトのAちゃん(以前『カフェ・デ・ハーフェン』の頃に居たバイトのAちゃんとは無論別人である。嗚呼、それにしてもイニシャルで話をすると紛らわしいものよ・・・・・・)は休みであった。
前日は、Tさんは団体客(壮年の男性6人程)の相手をしており、カウンターに居た私の相手は専らAちゃんがしてくれた。その折に、私が関東の某県より来た、という話をしたのであるが
「え?じゃあ、ディズニーシーなんかも近いんですか?」
「乗り継ぎさえ良けりゃ部屋から1時間ちょい・・・・・・だね」
「えーっ!良いなぁ。私、ディズニーシー行ったこと無いんですよ」
「あ、そうなんだ。あちこちでそういう話は良く聞くけど・・・・・・」
「今度、ディズニーシーのお土産買ってきてくださいよ」
「う〜ん・・・・・・そうだね、今度は来月に来るからそのときにでもテキトーに見繕ってくるワ」
「ホントですか?!ありがとうございます!!」
・・・・・・ウケ狙いの気が強い我が性格を此れ程迄に厄介だと思ったことは無い。とは言え、あまりにも大きなぬいぐるみでも買うのでなければそんなに値の張る品は無い故、今日にでもちょいと出かけて本当に何か見繕ってくることにしようか?どうせ中に入らずとも入口付近の『ボン・ボヤージュ』辺りで結構な数の商品が売られていることであるし。
それはともかく、盛り上がっていたのはAちゃんひとりであり、Tさんは話にノることも無く平然とドリンクを調えたり設えた席で団体客の相手をしていたりしたものである。流石に店を任されているオトナは年若くとも違うものよ、と感心していたものであるが・・・・・・閑話休題。

この日、元々私は此処に長居をする気は無かった。ドリンクを2杯程ちょいちょいと呷り(ドリンクの種類が豊富な直営のバー2店舗とは違い、此処のメニューの中で私が飲めるのは「カンパリソーダ」のみである)景気付けに何か1〜2曲歌ってさっさと退散し、前日訪れることが適わなかった『グラン・キャフェ』で今後の身の振り方などに思いを馳せながらひとり静かにグラスを傾けるつもりであった。
・・・・・・が、連れが居る。自分のペースのみで行動することは適わぬ(故に、私は団体行動が苦手なのである。特に酒が入る場では我儘が募る私である故、気を使わねばならぬ場は不得手なのである)。
取り敢えず、カウンターの海側(先客とは反対側)の端に席を占める。
「あら、Aさん、今日はアバンチュールですか?」(Tさん)
「どうかな?」(Aさん)
「良いですねぇ」(Tさん)
「いやね、隣の『ジャックポット』でよくお会いするんですよ。んで、今日ここに来るって話をしたら、まぁ、一緒に来ようか、ってことになって」
元より長居をする気は無い私、話が長引くと(引っ張られると)面倒なのでとっととネタばらしをし、「カンパリソーダ」を注文する。Aさんの注文は、ここにもキープしてある焼酎である。

先ずは、乾杯。
その後、その日の行程や近況などの四方山話をする。
その間、先客の男性はTさん相手にずっと話をしている。狭い店なので、必然的にこちらにもその内容が耳に入る。どうやら、海外のあちこちを訪れ、滞在などもしておられる方らしい。矢張り海外が好きであちこちへ行っているAさん、じっと耳を傾けている。故に、我々の話もそちら関係の話へと流れていく。
先客の話は、食事の話になった由。その中で
「ヨーロッパなんかには“コメ”が無いですからね」
というひと言があった。Aさん、こちらで大きく頷く。が、言いたいことは解るが“文字通り”としてしまうには少々(商売柄)引っ掛かるものがある。
「一寸今のはなぁ・・・・・・ポルトガルなんかにも炊き込みご飯風の料理がありましたよね」
放っておけばよいモノを、酔っ払いの身故、ついつい口を挟んでしまう。
「それはそうだけど・・・・・・うーん、一寸違うんだなぁ」
とうとう我慢出来なくなったのであろう。Aさん、先客の方へとついっと寄って行く。
「横から失礼。今の話は・・・・・・」
先客の女性を挟み、男性2人で話が始まる。と同時に盛り上がりを見せる・・・・・・やれやれ。

「何か歌います?」
と、Tさんが曲目の分厚いリストを持って来る。幾ら何でも「カンパリソーダ」のみで帰る訳にもいかぬであろう。が、アップテンポの賑やかな曲は話を中断させる恐れがある。このまま放っておいて貰ってさっさと移動しようと思っているので、話を中断させることは、避けたい。
「じゃ、これを」
とリクエストしたのは、中島みゆき女史の「寒水魚」というアルバムに収録されている「歌姫」。これは淡々としたタイプの歌である。BGMにも紛うばかりのスローテンポの歌である故、話の邪魔にはならぬであろう。

淋しいなんて口に出したら
誰もみんなうとましくて逃げ出してゆく
淋しくなんか無いと笑えば
淋しい荷物肩の上でなお重くなる・・・・・・

(中島みゆき「歌姫」より)

思えば、この頃去来していた(今でも無いとは言わぬが)思いが歌詞になっていた歌であっただろうか。声を張り上げず、半ば呟くように歌う。カウンターの向こう端は気付かずに話に熱中しているようである。
そこへ、『K』の女性と“素顔のサンタ”が店内に入ってきた。ふたり、入ってくるなりニッコリと笑い、私の隣りの席に着く。歌は未だ終わっていない。
ようやく歌が終わった。Tさんと隣りから拍手を貰う。そこで、話に熱中していた男性2人、歌っていたのに気付いた様子。
「失礼。BGMかと思いましたよ」
「いえ、こちらもそのつもりでしたので」

こちらの話は、この“サンタ”をネタにした川柳の話になる。そう言えば、『ジャックポット』でもこの話は出ていたような・・・・・・。
請うて、その川柳を見せて貰う。内容は著作権に触れるであろうし、出処は一寸した理由があるのでここで公表するのは差し控えるが、確かに、これには納得してしまったものであった。
「成る程・・・・・・上手いこと言いますねぇ」
“サンタ”(私がこの人物を“サンタ”と表記するのはその川柳によるものである)は、その間に洋楽の歌本を見ている。が、なかなかお目当ての歌が見つからぬ様子。
Tさんより操作する機械を受け取り、『K』の女性が“サンタ”の歌いたい歌を検索する。程無くして、歌が見つかった様子。曲が始まる。私は耳にしたことは無いが、楽しげな、どこぞの民謡風の可愛らしい曲調の歌である。
“サンタ”が歌い始める、
すると、話を中断したAさんがそれに併せて歌い出す。
しかし、これはこの“サンタ”にはお気に召さぬ様子。どうやらひとりでゴキゲンに歌いたかったらしい。急に機嫌が悪くなり、演奏を止める。そして、再び同じ曲をリクエストし、歌い始める。
味を占め、“サンタ”をからかうモードに入ったかの如くのAさん、今度は始めから歌を併せる。ふくれっ面で“サンタ”が再び歌を止め
「違う!お前は歌うなよ!!」
とばかりにAさんを見る。Aさん、苦笑してようやくからかうのを止める。
三度、同じ曲がかかる。今度ばかりはご機嫌を損ねる訳にもいかぬであろう。隣りと目の前で女3人(うちひとりは私である)、手拍子でその場を盛り上げる。無論、歌い終わった“サンタ”には満場の拍手。満足げにマイクを置く“サンタ”。
(手の掛かるオヤジだ・・・・・・あせあせ(飛び散る汗)

次にAさんが矢張り洋楽の歌をリクエストして歌い始める。そろそろ座を移すか・・・・・・と思った矢先、すっとTさんが席を外してしまった。これでは、店を出る訳にはいかぬ。
「そう言えば、『ジャックポット』に○○さんのチップ、山積みになってましたよ」
「え?あれ、私のチップだったんですか?」
『ジャックポット』のブラックジャック台に乗っていた主の居ないチップは私のものであったのだそうな。・・・・・・そう言えばSa君には「中断する」と言っていたのだった、と思い出した。
お隣と話をしつつじりじりしながら待ち、ようやく店内に戻って来たTさんにチェックを頼み、勘定を支払う。この間に歌はまたもや“サンタ”に戻る。
「あら?もう行っちゃうんですか?」
「今回未だ『グラン・キャフェ』に顔出してませんからねぇ。やっぱり一寸は顔を出しておかないと、ね」
「そうですか。じゃ、また」
「はい、それじゃ」
店内の客に暇乞いをして歩く。歌っている“サンタ”なぞ、歌いながら手をすっと差し出す始末。グローブの如き大きな手と握手をし、その場を離れる。

Tさんは、店外迄送ってくれた。
「じゃ、また来月来ますから」
「お待ちしてます」
「それじゃ」
「・・・・・・ディズニーシーのお土産、宜しくお願いします」
成る程。
何も言わなんだが、貴女も欲しかったのね。
では、土産はふたつだな。
posted by daydreamer at 12:02| Comment(0) | TrackBack(0) | Amstelveen Story | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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