2008年01月28日

負けじ魂(其の拾)

ところで、先の記事の「デリーフデ」を撮影する際、デジカメのモニターを見たところI君と並んで作業をしていたTさんがバッチリファインダーに入っていたのが見えた。
「Tさん、悪いけど写るから退いてくれる?」
と言うと、何を考えたのだかTさん、ニヤリと笑って一歩前に出る。
この位置では写真の中央に写るではないか。
「あ、そう。それなら・・・・・・」
とカメラを構えると、今度は慌てて下がる。ならば最初から下がれば良いのに・・・・・・(お蔭で貴重な“Tさんのショット”を撮りはぐってしまった)。

それはさておき。

第四弾「ボストンクーラー」締めの「XYZ」の前に、Tさんが出してきたのがこれである。
「これは・・・・・・中身は何?」
「「ボストンクーラー」です」
これは、ラムベースのカクテルである。炭酸飲料はソーダを使うときとジンジャーエールを使うときがあるが、この「ボストンクーラー」は然程甘みを感じなかった故、恐らくはソーダを使用したものであろう・・・・・・と、これはI君が「ボストンクーラー」を作ってくれた際のご紹介でも申し上げたような気がする。
言ってはナンだが、Tさん、案外“意外性”へと冒険しないような傾向が見られぬことも無い。何せこの日作ったカクテルのうち「ブロードウェイ・サースト」は以前『カフェ・デ・ハーフェン』に居た頃のMさんが作ったものであるし、「ボストンクーラー」は先にも申し上げた通りI君が作ったものであるし、「テコニック」「ブランデーバック(ホーセズネック崩れ)」「XYZ」は私の注文であるし・・・・・・それは兎も角。

今回のデコレーションは、極薄切りのオレンジを半月に切り、それをグラスに刺したものである。原理は簡単であるが、この極薄切りを作るのには良く切れる包丁(ぺティナイフ)と当の本人の腕が必要になる。実際、手の利かぬ今の私では、この極薄切りを作ることが出来る自信は、全く無い。ちなみにこのオレンジ、放っておいても捨てるだけであるし、そろそろ糖分も補給したいと思っていた矢先であるのでスッと取って食してしまったものである。
グラスを傾けつつ、話に興じる。いつの間にやら『クロントン』のFさんも加わり、スタッフをも交えながらの話になっていた。交々の話は尽きず、いつの間にか時間が静かに過ぎ去って行く。

そんな中、Tさんが言う。
「○○さん、ひょっとしたら念願が叶うかも知れませんよ」
「?」
「ほら、5桁に乗せたいって言ってたじゃないですか」
「あ、あれね」
いつの間に、それ程飲んでいたのであろう。
もしかしたら、これはチェイサーにとガブガブ飲んでいる「ウーロン茶」が効いたのやも知れぬな。

第五弾「XYZ」そしてこれが最後の「XYZ」である。前日はデコレーションなぞ付けなかった癖に、この日は最後までデコレーション付きのカクテルで通してしまった。しかも、それぞれ趣が違う。こればかりは天晴れとしか言いようが無い。

飲んでいる間に伝票が来た。
「で、幾ら?」
「¥10,500です!」
「ほお、行ったねぇ」
夜も更けたこととて、最早此処には知り合いしか居らぬ。
私は思わず感嘆の声を漏らす。
期せずして、拍手迄もが沸き起こる。
・・・・・・が、カネは支払ったもののグラスにはまだまだたっぷりと「XYZ」と「ウーロン茶」が残っている。

閉店後のことである。テーブル席には客は残って居らぬ。
カウンターに座っていたのもFさんとS君、そして私の3人である。
S君、先程のカタログを、今度はFさんにも見せながらまたもや一頻りレゴ談義に話を咲かせる。両脇で、Fさんと私はそんなS君を見遣りながらうんうんと頷く。
スタッフ達は後片付けに大わらわ。

楽しい時間はあっという間に過ぎて行く。
いつの間にか、グラスも空いていた。
先ず、Fさんが店を出る。
S君も少々ふらつく足取りで店を出て行く。
この日も、最後に残った客は私であった。
「じゃ、遅くまでどうも」
「ありがとうございました!」
スタッフ達の声に送られながら店を出る。

その後、何故かT姐さんが『アムステルフェーン』の入口まで付いて来た。
途中、『パロット』のTさんが客を送りに出てきたのに出くわした。
Tさん、今宵は肩を出したドレス姿である。
「おーおー、色っぽい恰好しちゃって」
と、からかいながらその場を離れる。『パロット』も、今宵は賑やかな声が響いていた。

『アムステルフェーン』の入口で、名残を惜しみながら話をする。
「そう言えばさ、『グラン』のNさん、昨日ちょっと話をしたんだけど「後は若い人に任せようかと・・・・・・」なんて随分年寄りじみた話し振りだったっけね。そんな歳でも無いだろうに」
「そうですね・・・・・・幾つくらいに見えます?」
適当に見繕って答えてみる。Tさんの答えによると、私の見繕いもそう遠からじといったところであったようである。
「じゃ、やっぱりそんな歳じゃ無いじゃない」
「そうですね。それに、N君抜けたら後はハ○のMしか居ませんしね」
・・・・・・いや、まぁ、私もそこまでハッキリと言った例は無いが・・・・・・
「それじゃ、今日はどうも」
「ありがとうございました。またお待ちしております」
見送られながら“常宿”へと歩みを進める。
頬を刺す空気は、いつにも増して冷たかった。

最後は、存外あっさりと終わってしまったと感じた「Jaclpot Story:負けじ魂」であった。

この度のタイトルは「Tさんのデコレーションシリーズ」と「私の5桁の勘定」にかけたものである。期せずして両名共に意地を張り通してしまったのがご覧頂けたであろうか?
振り返ってみれば、どちらも後で笑い話に出来るようなものばかり。
が、書くに書けなかったことではあるが、あの折の私は明らかに不審を抱かれるような行動を取っていたことであろう。いつもであればせぬようなことばかりして
「珍しいですね」
と、Tさんに言われてしまったものであるから。

実のところ、つい最近まで心に秘するものがあった。
そのことは、今後お目にかける「Grand Cafe Story:揺れる短夜」の中に綴ることもあろうかと思う。
が、その後事情が変わった。
決して事態が好転した訳では無いが、事態の理由が判明した為に絶望に近いような境地から脱した、と言えば現在の状況が説明出来るであろうか。
少なくとも、言えることは唯一つ。
次回の帰国が「The Last」となることは有りそうも無くなった。
この場をお借りして、大騒ぎをしてしまったことについてお詫び申し上げる。
(だから、次回は安心して「ラストキッス」を飲ませて頂きたいと思うばかりである)

斯様に考えると、次回の帰国の“次”に思いを馳せることにもなる。
さて、本当に“次”は如何致そうか?
ゆるりと出来るときに愛する彼の地で四夜程を過ごし、一夜は心配をかけたあの店を珍しくも拠点とすることに致そうか・・・・・・。
posted by daydreamer at 23:55| Comment(0) | TrackBack(0) | Jackpot Story | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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