2008年05月06日

更けゆく晩春の宵に(其の肆)

『按針』に入ると、カウンターの入口近くの席には『パサージュ』の『K』のお2人が座っていた。
「こんばんは」
「あ、こんばんは」
「いつもありがとうございます」
「いえいえ」
この日は季節限定ショップの『U』で買い物をしたばかりであった。Fさんから、Aさんにそれと告げられたようである。
「お飲み物は?」と、Tさん。
「あ、お茶で」
「良いんですか?」
「ま、ね。先刻『シェヘラ』でも一寸飲んだからね」
「それにお昼の2合もありますよね」
と、昼に話をしたばかりのFさんも加わる。Tさん、またそんなに飲んだのかとばかりに少々呆れ顔で
「あがり一丁!」
「応!」
と、寿司屋の威勢の良さは何処も同じ。

注文が一段落しているので、Tさんは私の隣に立っている。
こうなると、彼女の服装が和装ばかりのスタッフの中では異彩を放って見える。何となれば、着ているのは『ジャックポット』の制服であるのだ。
「Tさんさぁ」
「はい?」
「こんだけ『按針』に応援に来るんだったら作務衣誂えたら?」
「ヤですよぉ。また戻んなきゃいけないんですし」
「着替えりゃ良いじゃん」
「ヤですってば。ま、何着ても似合いますけどね」
自分で言うかね・・・・・・あせあせ(飛び散る汗)
「でさ、今日は何が良さそう?」
「今日ですか・・・・・・やっぱり旬の縞鯵と平目と鯛ですかね」
成る程、白身が良いのか。
Aさん、話に割って入る。
「『シェヘラ』の飲み比べは何が良かったですか?」
「うーん、私の好みですとやっぱり「純米酒」ですね。あの中では一番日本酒の美味しさが味わえましたし」
Fさんも話に加わる。
「あー、やっぱりお酒の好きな人は「純米」って言いますねぇ」
Aさんは、隣で納得したようにうんうんと頷く。

1貫食してから慌てて撮った「平目」お茶をひと口飲んでから、早速握りを頼む。
先ずは「平目」。
私の寿司の好みは光り物と白身である。殊に「コハダ」には目が無い。が、残念ながら『按針』には「コハダ」は無い。
「此処に「コハダ」があればすっ飛んで来るんだけどね」
「こっちじゃあんまり食べないですからね。光り物も季節が合えば「鰯」位はありますけど」
ガリを摘みながら話をし、握りが来たところでひょいと摘んで醤油に付け、食す。あっさりとした白身が旨い。
これだけの白身ならば塩と酢橘で食してみたいものだ。ちと前に流行った白身の食べ方であるが、質を選りすぐった白身ならば醤油よりも塩酢橘の方がダイレクトに旨味を楽しめるので好きなのである。
「鯛」は忘れずに撮影したが「縞鯵」は撮りはぐった次に「鯛」を頼んだ。
和食処で食す刺身の「鯛」はこりこりした食感が身上であるが、寿司の「鯛」は酢飯と馴染むようにむっちりとした食感になるよう調整している。
ここの「鯛」も噛み締めるとむちっとした歯応えが返ってくる。この食感が実に心地良い。旨味のエキスを舌で存分に味わい、喉にするりと滑り落ちる感覚を楽しむ。流石に“魚の王”と呼ばれる所以である。

数人の客が入ってきた。入口近くのテーブルに席を占める。
すると、◆◆さんがその中にいらっしゃるのが見えた。◆◆さんも私に気付いた。
「こんばんは」
「あ、お久し振りです」
「今回は何泊ですか?」
「1泊です。流石に今はお休みが取れないんで・・・・・・。そのうちゆっくりと連泊で来る積りではいますが」
(実際、8月に連泊をすることにした。“病気の入院”の積りでの連泊である。故に、あまり短いと効果は無いであろうとこじ付け、次回は“常部屋”に4連泊と今までに無い長期の連泊にした。流石に人が多いであろう盆の日程には掛からぬようにはしたが)
「そうですか。じゃ、ごゆっくり」
◆◆さん、お連れが占めたテーブル席に着く。

次は「縞鯵」として、その次は何にしようか・・・・・・それ程食欲がある訳で無し、巻物はちょいと重いから握りをもう1種類貰おうか、いやいや、それでは“4”種類になるから縁起が悪い。もう1種類あった方が良かろうか・・・・・・。
取り敢えず「縞鯵」を頼む。握りが目の前に来る。ひとつを頬張る。すると、入口に2人連れの方々が入ってくるのが見えた。AさんFさんのお知り合いの方々である。
テーブルもカウンターも席は埋まっている。私の荷物を退かしたとて、席はひとつしか空かぬ。
今回はだらだらと食べていても仕方無し、最早食事は良かろうともうひとつを急いで頬張り
「じゃ、お勘定ね」
「え?もう良いんですか?」
「うん、そんなに食欲無いし」
荷物を抱えてさっさと席を立つ。
「すみません」
とのお声も掛かったが
「いいえ。もう充分ですから」
と応えを返す。
「すみません。○○さん、もっと食べたい様だったのに・・・・・・」
「そんなに食欲がある訳じゃないしね。また来るワ」
「はい。Taさんもお待ちしてます」
「Taさん?」
「はい、Taさん」
隣でにこやかに会釈をするのは、以前より顔馴染みで短い会話も交わしたことのある『按針』の女性スタッフである。『アムステルフェーン』の“Taさん”というと『ジャックポット』のI君であるが、こちらにも“Taさん”が居たのか・・・・・・。
「そう。じゃ、Taさんにもまたお目に掛かりに」
「はい、お待ちしてます」
とは、当のTaさんである。

煙草を取りがてら『ジャックポット』に戻ろうかとも思ったが、考えてみれば煙草の残りはあと2〜3本。『シーブリーズ』にも煙草は置いてあるが今吸っている銘柄は無いし、他の馴染みの銘柄はあるが酒も些か入っていることとて買いに行くのも面倒である。
『ジャックポット』に落ち着いてしまえば動くのも億劫になるであろう、ならばいっそ煙草無しで“挨拶回り”をしてしまおうかと思い立ち、先ずは『パロット』へと足を向けた。
posted by daydreamer at 21:31| Comment(0) | TrackBack(0) | Amstelveen Story | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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