2008年05月20日

更けゆく晩春の宵に(其の捌)

『ジャックポット』に戻ると、こちらはいつもの通り八割くらいの席が埋まる(まあまあの)盛況振り。花火の後に一寸寄っていく、となると街側の『グランキャフェ』よりも海側の『ジャックポット』の方が目に付き易いし、通年海側のドアを開け放つ上に夏にはテラス席を設ける(暑いので私は利用せぬが「初めての方はこっちの方が良いんじゃないですか?景色も良いし」(T姐さん談)ということもあってか割合に利用客も多いようである)為に、騒音対策のためかドアを閉めている『パロット』よりも入り易いのであろう。

真っ直ぐに席に向かうと、カウンターに居たEちゃんが少々食い残していたチーズの皿を奥から持ってくる。手付きからすると、恐らくラップをして冷蔵庫に保存してくれていたのであろう。こういう細かいところでの心遣いが私を此処から離さぬ所以である。
「あ、ありがと」
と声を掛ける。ちょいと頭を下げ、すいっとカウンターでの作業に入る。

「何か作りますか?」
と、I君から声が掛かる。
「そうね・・・・・・じゃ「スプモーニ」貰える?」
「先刻も「スプモーニ」でしたよ」
「そうだっけ?」
「はい」
「でもさ、今度はEちゃんに作って貰えば一応“違うモン"になるんじゃない?」
「先刻もEが作りました」
「そう・・・・・・だったっけ?」
「そうです」
すっかり記憶力が減退した私のボケとI君の軽いツッコミの会話である(単に酔いが回っていたともいえるのであろうが)。阿呆な話の間に、当のEちゃんがさっさと「スプモーニ」を作って出す。喉が渇いていたのでグッと飲み干し、「テコニック」を追加する。

傍らには、『按針』から戻って来たTさんが居た。
「先刻『グラン』でさ、Hi君通ったときにMが「お母さんの匂いがする」って言っていぢめるのよ。Tさん迄「私の息子です」なんて言い出すしさ、あれじゃアタシ迄Hi君のお母さんみたいじゃん・・・・・・」
とTさん相手にブツブツこぼす。すると
「でも、確かHi君のお母さんは若くしてHi君産んだみたいですよ。Tさんともそんなに変わらないんじゃなかったかなぁ」
と返ってくる。
成る程、そういう状況があったのか。と申しても、私が納得する筈も無い。
「でもさぁ、年齢差考えてご覧よ。私がHi君のカアチャンってのは一寸無理があるんじゃないかい?」
「うーん、でも、Eちゃんなんかだと私が1○歳のときの息子になりますしねぇ」
「んじゃ私の場合1○歳のときの息子になるのか・・・・・・」
それならば有り得ぬ話では無いのやも知れぬ。私に初めて来た縁談は確かその位の年齢で子どもを産んでいても訝しくは無い故に。
(これは十数年前の田舎の習慣をそのまま持ち込んだ話であった。尤も、自身も晩婚であった両親は私の年齢を案じ、相手との年齢差に首を捻っていた為に、この話を間を置かずに断っていたのであるが)

「Mなんですけどね」
と、Tさんが話し出したとき、私は少なからず驚きを覚えたものである。あまり折り合いが良くなかったTさんとMさん(これは『ヴィノ』のNさんとIさんの間柄に匹敵するものがあったであろう)であるので、本人達の口から双方の話を聞くことは無かったのだ。
「私、最近助っ人で他に行くじゃないですか。で、前はMがその役目だったんですよね」
「うん」
「だから大変さが判らなくて文句ばっかり言ってたんですけど、自分が他に行くようになって大変だったんだな、って判って・・・・・・」
「はいはい」
「で、この間Mに「ゴメンね」って謝ったんですよ」
「そうなんだ」
「Mも一緒に働いてるときはどうかな?って思うこともあったんですけど・・・・・・」
それはそうであろうな。Mさん、接客業でありながらあまり人あしらいは達者な方では無い故(私は慣れているので何とも思わぬが、慣れぬ方からすると恐らく“無愛想”の類に入るであろう)、Tさんに対しても同様であったと思われる節もあるし。

グラスが空になったので「クラウディースカイリッキー」を追加して話を続ける。
ふと、Tさんが横を向いた。
「Haちゃんが“働け!”って顔してますよ」
「いえ、僕は・・・・・・」
Ha君、慌てて頭(かぶり)を振るが、本気にしてはいけない。Tさんは時々冗談でカラむことがあるのだ。
「○○さんの相手をしてるのも仕事ですよねぇ」
「ま、良いけどね・・・・・・」
posted by daydreamer at 23:15| Comment(0) | TrackBack(0) | Amstelveen Story | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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