2008年05月26日

更けゆく晩春の宵に(其の拾)

「じゃ、Tさん、後はお願いします」
と言って、I君は向こうに行ってしまった。
未だ、注文の品をあと一品残している。
その分の支払いは既に済ませている。
故に、未だこの場所にいても問題はあるまい。
そう思うのであるが、照明が落ちた店内に“独りきりの客”というシチュエーションはどうも落ち着かぬ。
そわそわしだした私に、Tさんも流石に気が付いたようである。
「どうしたんですか?」
「いやね、“開店当初に独りだけ”ってのは慣れてるんだけどね」
「ああ、“こんなもんだ”って」
「そうそう。それに“わーい、貸切だ!”って楽しんでたりもするんだけどさ」
「はい」
「こういう“閉店間際に独りだけ”ってのはどうも慣れなくってね・・・・・」
「大丈夫ですよ。私達、未だ居ますし」
それが残業を強いている状況であるので落ち着かぬのだとは終ぞ口に出せなかった。

「ま、ね。此処に来るときはいつも現実じゃない気分だしな」
「何ですか?それ」
「いやね、私なんかにとっては此処での時間は“夢の中”みたいなモンなんだワ。“現実”から一寸離れた・・・・・・って感じでさ」
「じゃ、私は“妖精”ですか?」
嬉しそうな顔で言うTさん。私も其処までは言っては居らぬが・・・・・・たらーっ(汗)
「“妖怪”の間違いじゃないですか?」
間髪入れずI君が口を挟む。
I君、よく言った!
Tさん、はっしとI君を睨むが、I君、涼しい顔でレジの精算をしている。

「でね、○○さん」
「何じゃ?」
「前のブログで○○さん、私がオーソドックスなものしか作らないって書いてたでしょ?」
「ああ、はいはい」
「だからね、今日はあれも作ろう、これも作ろうって考えてたんですよ。だけど今日は注文の品ばっかりでしたよね」
「だね」
「だから一寸物足りなかったんですよね」
成る程。
では、次回の帰国(7月)ではお任せをすることに致そうか。・・・・・・だが、Tさんは『按針』に助っ人に行っていたのではなかったか?それではお任せもへったくれも無いような気がするが・・・・・・。

「ところでさぁ」
「はい」
「Tさん、時々私のコト“お客さん扱い”してないときあるだろ?」
「そんなこと無いですよぉ。ちゃんと“お客さん扱い”してるじゃないですか!」
「嘘付け」
では、以前の体当たりやド突きの類は何だと言うのだ、と少々絡みモードに入ろうかという折、ふとTさんが横を向いた。嬉しそうに表情が緩んだところを見ると、どうやら何かを見つけたらしい。
「あー!I君の方が○○さんを“お客さん扱い”してませんよ!」
ほれほれと私を促す。
釣られてひょいとI君の方を見る。
するとI君、土産に持ってきた「スティックケーキ」を、一応は身を屈めてはいるもののしっかりと口に運んでいる。
あのね・・・・・・私はそれ程喜んで貰えて嬉しいのだから、高がそれ如きで鬼の首を取った様な顔をするのではない。お姉さんなのだから。
ふとI君を見ると、今度は半ば開き直ったように堂々ともう1本の「スティックケーキ」を口にしている。
I君、余程空腹だったのだな・・・・・・。ならば、次回は矢張り食いでのありそうな「東京ばな奈」と「黒べエ」を両方共に土産にせねばならぬであろうな。

ぐっとグラスを空けた。
「お作りしましょうか?」
「お願いします」
Tさん、慣れた手つきで「XYZ」を調える。
が、そろそろ深酒の所為か副作用の吐き気が込み上げてくる。
実は、Tさんには薬の説明書を見せて“病気”を知らせていた。
現在の症状は軽いものであるが、ふとした折に妙なコトを仕出かさぬとも限らぬと医師に忠告されている。不本意ながら、その折のストッパー役を暗に『ジャックポット』のTさんと『グランキャフェ』のMさんに頼むことになりそうである。・・・・・・それはさておき。
ひと口、ふた口と飲み進む。舌に当たる風味は柔らかく心地良い。が、そろそろ胃が悲鳴を上げている。
「・・・・・・ごめん。今日は飲めそうに無いワ」
と、断腸の思いで半ば飲み進んだグラスを押しやる。
Tさん、何も言わずスッとグラスを引く。

荷物を片づけ、身支度をして『ジャックポット』を出る。
今日もまたTさんが見送ってくれた。
途中、『パロット』の前に差し掛かったとき
「ここ、未だやってるかなぁ・・・・・・。先刻「また来る」って言ったんだけど」
「もう閉まってるんじゃないですか?」
「そうかねぇ」
2人、『パロット』の扉の前に立ち、中の様子を伺う。
どうも静まり返っているようである。
Tさん、そっとドアを押し開ける。
すると、既に店仕舞いをして着替えを済ませたYさんが居た。
「どうもぉ〜」
と、声を掛け、2人して手を振ってドアを閉め、その場を離れる。
『アムステルフェーン』の入口に立ち、
「じゃ、お休みなさい」
「はい、またね」
とは、いつもの挨拶。
火照った頬を海風が心地良く撫でていった。

たった一晩のコトなれど・・・・・・
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2008年05月25日

更けゆく晩春の宵に(其の玖)

話は、土産に持ってきた「スティックケーキ」に及んだ。
「○○さん、いつもお土産ありがとうございます」
「いえいえ、どうも」
「で、一寸思ったんですけど・・・・・・」
「はい?」
「フツー、ハウステンボスに来るお客さんは帰るときに荷物が増えるんですよね」
「ま、そーね」
「○○さんの場合、帰るときに荷物が減るんじゃないですか?」
「ま、そーだね」
・・・・・・尤も、今回は閉店セールを行っていた『トラベルマンコレクション』でしこたまTシャツを購入したので少々荷物は増えたのであるが。
さて、次は何を買っていこうか?偶にはオーソドックスな東京土産である「東京ばな奈」なども面白いやも知れぬな。そうすると、好みによっては「黒べエ」なども外せぬやも知れぬし・・・・・・まったくもって悩みの尽きぬことである。
何せこういう機会でもなければ甘いモノは購入することも無い。が、あれこれと並ぶスイーツは購入してこそはじめて面白みが沸くのである。故に、私の“土産配り”は今後も止むことは無いであろう・・・・・・と思う。

この日は珍しくゲームに遅くまで興じる客はいなかった。
帰る足も何時もより早めであっただろう。ボツボツと客が帰り始め、ラストオーダー前には客は店の半分を占めるほどになった。
すると、ふいっと人影が動いた。
「じゃ、お先に失礼します」
と声を掛けたのはHa君であった。
私は、訝しげな顔をしたのであろう。
「どうかしました?」
と、これはTさん。
「いや、“シンデレラ”はEちゃんだったような気がしたんでね」
「Eちゃんは今ウチの主力ですから帰す訳にはいきませんよ」
「あ、そうなんだ」
カウンターの向こうでI君もうんうんと頷く。
「んじゃ、どうもね」
と、Ha君に手を振る。スイッと会釈し、廊下側の出口から出て行く。

ラストオーダーを聞きにスタッフが回り始めた。こういうときは手近なカウンターの客に最初に聞くものだと思っていたが、大抵は、先ずテーブル席の客にラストオーダーを聞いて回り、カウンターの客(この場合は私)には最後にラストオーダーを聞く。
スタッフが自分の周りから離れたので、グラスを干し、煙草に火を付ける。ふうっと一服すると、ラストオーダーを取りまとめたスタッフがカウンターに戻ってくる。
「○○さん、ラストオーダーどうします?」
「そうね・・・・・・2杯頼んでも良い?」
「はい、どうぞ」
「じゃね、「デ・リーフデ」と「XYZ」お願い」
「畏まりました」
ちゃんと飲み切ったのは「デリーフデ」が最後先ずは「デ・リーフデ」が出てくる。
ひと口、含む。
相も変わらずブルーベリーの香りが心地良い。
カウンターの中を見ると、一通り注文の品が出たようでホッとした雰囲気が伝わってくる。
シンクの中にはテーブル席から戻って来たグラスや食器が積んである。これを洗い、片づけた頃、また人影が動いた。
「じゃ、お先に失礼します」
「はいはい、どうもね」
と、Ha君と同様に手を振る。手にはしっかりと「錦松梅」を握り締め、すっと会釈をして出て行く。

テーブル席の客も、三々五々と勘定を済ませて出て行く。
「○○さん、飲んでて良いから先にお会計お願いします」
と、I君が伝票を出してきた。カネを払い、釣りを受け取るうちに他の客は全員出てしまったらしい。
テーブルのグラスや皿を回収し、片付けをする。
私はそれを見ながら未だ飲んでいる。
ふっと、照明が落ちた。
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2008年05月20日

更けゆく晩春の宵に(其の捌)

『ジャックポット』に戻ると、こちらはいつもの通り八割くらいの席が埋まる(まあまあの)盛況振り。花火の後に一寸寄っていく、となると街側の『グランキャフェ』よりも海側の『ジャックポット』の方が目に付き易いし、通年海側のドアを開け放つ上に夏にはテラス席を設ける(暑いので私は利用せぬが「初めての方はこっちの方が良いんじゃないですか?景色も良いし」(T姐さん談)ということもあってか割合に利用客も多いようである)為に、騒音対策のためかドアを閉めている『パロット』よりも入り易いのであろう。

真っ直ぐに席に向かうと、カウンターに居たEちゃんが少々食い残していたチーズの皿を奥から持ってくる。手付きからすると、恐らくラップをして冷蔵庫に保存してくれていたのであろう。こういう細かいところでの心遣いが私を此処から離さぬ所以である。
「あ、ありがと」
と声を掛ける。ちょいと頭を下げ、すいっとカウンターでの作業に入る。

「何か作りますか?」
と、I君から声が掛かる。
「そうね・・・・・・じゃ「スプモーニ」貰える?」
「先刻も「スプモーニ」でしたよ」
「そうだっけ?」
「はい」
「でもさ、今度はEちゃんに作って貰えば一応“違うモン"になるんじゃない?」
「先刻もEが作りました」
「そう・・・・・・だったっけ?」
「そうです」
すっかり記憶力が減退した私のボケとI君の軽いツッコミの会話である(単に酔いが回っていたともいえるのであろうが)。阿呆な話の間に、当のEちゃんがさっさと「スプモーニ」を作って出す。喉が渇いていたのでグッと飲み干し、「テコニック」を追加する。

傍らには、『按針』から戻って来たTさんが居た。
「先刻『グラン』でさ、Hi君通ったときにMが「お母さんの匂いがする」って言っていぢめるのよ。Tさん迄「私の息子です」なんて言い出すしさ、あれじゃアタシ迄Hi君のお母さんみたいじゃん・・・・・・」
とTさん相手にブツブツこぼす。すると
「でも、確かHi君のお母さんは若くしてHi君産んだみたいですよ。Tさんともそんなに変わらないんじゃなかったかなぁ」
と返ってくる。
成る程、そういう状況があったのか。と申しても、私が納得する筈も無い。
「でもさぁ、年齢差考えてご覧よ。私がHi君のカアチャンってのは一寸無理があるんじゃないかい?」
「うーん、でも、Eちゃんなんかだと私が1○歳のときの息子になりますしねぇ」
「んじゃ私の場合1○歳のときの息子になるのか・・・・・・」
それならば有り得ぬ話では無いのやも知れぬ。私に初めて来た縁談は確かその位の年齢で子どもを産んでいても訝しくは無い故に。
(これは十数年前の田舎の習慣をそのまま持ち込んだ話であった。尤も、自身も晩婚であった両親は私の年齢を案じ、相手との年齢差に首を捻っていた為に、この話を間を置かずに断っていたのであるが)

「Mなんですけどね」
と、Tさんが話し出したとき、私は少なからず驚きを覚えたものである。あまり折り合いが良くなかったTさんとMさん(これは『ヴィノ』のNさんとIさんの間柄に匹敵するものがあったであろう)であるので、本人達の口から双方の話を聞くことは無かったのだ。
「私、最近助っ人で他に行くじゃないですか。で、前はMがその役目だったんですよね」
「うん」
「だから大変さが判らなくて文句ばっかり言ってたんですけど、自分が他に行くようになって大変だったんだな、って判って・・・・・・」
「はいはい」
「で、この間Mに「ゴメンね」って謝ったんですよ」
「そうなんだ」
「Mも一緒に働いてるときはどうかな?って思うこともあったんですけど・・・・・・」
それはそうであろうな。Mさん、接客業でありながらあまり人あしらいは達者な方では無い故(私は慣れているので何とも思わぬが、慣れぬ方からすると恐らく“無愛想”の類に入るであろう)、Tさんに対しても同様であったと思われる節もあるし。

グラスが空になったので「クラウディースカイリッキー」を追加して話を続ける。
ふと、Tさんが横を向いた。
「Haちゃんが“働け!”って顔してますよ」
「いえ、僕は・・・・・・」
Ha君、慌てて頭(かぶり)を振るが、本気にしてはいけない。Tさんは時々冗談でカラむことがあるのだ。
「○○さんの相手をしてるのも仕事ですよねぇ」
「ま、良いけどね・・・・・・」
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2008年05月13日

更けゆく晩春の宵に(其の漆)

テコニックはそれ程強くないカクテルである。
喉が渇いていたこともあり、早々に飲み干した。
「次、何にします?」
「そうだね・・・・・・アタシ、今、薬飲んでるでしょ?だからね、あんまり強いのは飲まないようにしてるのヨ」
「成る程。で、何を?」
「そういう訳でね、「ロングアイランドアイスティー」くれる?」
「・・・・・・たらーっ(汗)
半ば呆れ、半ば唖然とした顔をするMさん。「ロングアイランドアイスティー」はジン・ウォッカ・ラム・テキーラの4種類の酒を使用するカクテルで、度数は大体30度位なのだそうな。大変に飲みやすいカクテルであるが、この度数は強いのやら弱いのやら・・・・・・。
それは兎も角、Mさん、ふっと屈んで何やら操作をしている。すると、何時ぞや『ヴィノテーク』で聞いたガリガリガリ・・・・・・という音が響いたものである。
(ん?砕氷機?)
と思ったときにはもうグラスにクラッシュアイスを詰めている。一旦カウンターの向こう端に行って「ロングアイランドアイスティー」を作って持ってきた。ご丁寧にレモンスライスを飾ってあるので一見すると普通のアイスティーの如くに見える。ストローも添えてきたのであるが
「あ、ストロー要らん」
と言うと、マドラーを入れるグラスをスイッと出す。彼の如く我儘に呼吸を合わせて対応して貰えるのは、矢張り馴染みと言う所以であろう。

ピアノの演奏が始まった。束の間、心を音に遊ばせる。
ふと、人の気配がした。振り向くと、バイトのHi君が入ってきたところである。流石にこれだけ出入りをするといい加減顔も覚えるのであろう、Hi君、すっと会釈をして通り過ぎる。
「アイツですね、Tさんを見ると“お母さんの匂いがする”って言うんですよ」
「あ、そう」
ひらめき
ニヤニヤ笑いを浮かべるMさん。
「・・・・・・?」
「お母さんの匂いがする」
「あんな大きな息子を持った覚えは無いわい」
年を考えてみよ。あの年の息子を持つ為には高校在学中に産まねば間に合わぬではないか。
「それにしてもさぁ、アンタ、アタシからかうときのレパートリー少ないよね。“甘いモノ”と“赤ワイン”でしょ?今の入れても3つしかないし・・・・・・もっと他のモンは無いの?」
「ありません」
言い切るのではない。お笑い系。

つっと手を洗いに立った。席に戻る途中、ホールに出ているTさんとバイト君達が、ホール席への入口近辺のカウンター付近に集まっている。
「Tさん、Mがいぢめる」
「どうしたんですか?」
「先刻Hi君がそこ通ったら“お母さんの匂いがする”って言うのヨ」
「でもこの子可愛いですからね」
「ま、そうでしょうけどね」
「私の自慢の“息子”ですよ」
ガバッとHi君の肩を抱いて言う。のは良いが、御姉様と私はひとつしか違わぬではないか。“いぢめる”と訴えているのに追い討ちをかけてどうするのだ。
「アタシはこんなデカイ息子を持った覚えは無い!」
ほれみろ。また癇癪玉を破裂させてしまったではないか・・・・・・あせあせ(飛び散る汗)

足音荒く元の席に戻り、着く。携帯で現在時刻を見ると、既に22:00近くになっている。そろそろ煙草が恋しくなってきた。
「じゃ、帰るワ。「XYZ」ね」
「畏まりました」
Mさん、グラスを用意する。が、動く気配は無い。訝しく思っていると、豈図らんや、Nさんがシェイカーを振りながらこちらへやって来る。
(珍しいこともあるものだ)
と思っているうちに、グラスに「XYZ」を注ぐ。ふとNさんを見ると、いつもは見ることの無い眼鏡を掛けている。
「あれ?眼鏡掛けてましたっけ?」
「乱視が酷いんですよ」
「近くを見るのがしんどいとかじゃなくて?」
「それは無いですね」
それはそうであろう。Nさんは未だ若い(『ジャックポット』のTさんよりも年下である)のだから・・・・・・。
グラスを取り、「XYZ」を干す。こういうときは触らぬ方が良いと知ってか、Mさんは何も言わず、特に突付くこともしないまま。何せ此奴の前で癇癪玉を破裂させたのはこれが初めてでは無く、その後何食わぬ顔で飲みに来た私の様子も見ているのだから。
空のグラスを置き、席を立つ。レジへ向かうと、伝票を持って付いて来たのはMさんである。
勘定を支払い、出口へ向かう。
「ありがとうございました」
の声は、背で聞いた。

それにしても、いつもと違うバーテンダーの「XYZ」。
これが“今後入店拒否”の意思表示だとしたら一寸怖いな・・・・・・がく〜(落胆した顔)
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2008年05月07日

更けゆく晩春の宵に(其の陸)

『グランキャフェ』は、案の定多くの客で埋め尽くされている訳では無かった。私の“定席”も空いていた。
「いらっしゃいませ」
の声に迎えられ、真っ直ぐに“定席”に歩み寄り、腰を下ろす。

「あのさ、薬飲むから水くれる?」
「今日の最初の注文が“水”ですか・・・・・・」
くさった様な表情で応えるのは、無論のことMさんである。それでも、間髪入れずに水の入ったタンブラーを出してくる。
「薬飲むから常温の方が良いですよね」
「うん、ありがと」
今も切らせぬ薬を飲む。この薬が何であるかは、Mさんは薄々感付いている様であるので、それ以上のことは特には言わぬ。
「でも、これは注文とは言わないんじゃ・・・・・・せめて“最初”じゃなくて“0.1番目”位に言って欲しいですよね」
「そうですね」
傍らのTさんと、彼の如くの会話を交わす。

「さて、今日は○○さんが来たから忙しくなるかな?」
「そんなことは無いでしょう」
「何時もそうじゃないですか」
「そう何度も続く訳じゃ無いでしょう。確かに今日は人多かったですけど」
「そうそう。明日のイベントに備えて大勢来てましたよね」
実際、『パサージュ』の『U』でFさんにも
「今日、よくホテル取れましたね」
と言われた程、多くの人が居られたのだそうな。
「そうですね。実際今日も夕方から自転車借りたんですけど、思う様に漕げない位華やかな衣装を着た方々が・・・・・・」
「そうそう。“ハイジ”達がいっぱい居ましたよね」
・・・・・・アレを“ハイジ”と呼ぶ勇気は私には無いが・・・・・・

「ま、兎も角、これ、どうぞ」
と、またもや『クイーンアリス』の「スティックケーキ」を渡す。
「あら、何時もありがとうございます」
「いえいえ」
「これ、私の好きな人で分けようかな」
と、Tさんが言うと、Mさんがカウンターの中から拗ねたように
「僕、Tさんに嫌われてますからね」
と、言う。
「えー加減にせーよ・・・・・・ったく、もう。そう言えば、こちらは何人居るんですか?」
「えーと、この間1人卒業しちゃったんで5人ですね」
「したらさ、これ6本あるから1本位は回って来るんじゃない?」
実際どのように分けたのかは定かでは無いが。

「で、ご注文は?」
「じゃね、最初はあんまり強くないので。「テコニック」ね」
「「テコニック」すか」
「うん」
『グランキャフェ』のスタートは「テコニック」から取り敢えずテキーラを飲むのであればこれは基本であろう。「テキーラトニック」略して「テコニック」を頼む。バーテンダーとしては腕の振るい甲斐が無いカクテルであろうが、その辺りはご勘弁頂くとしよう。・・・・・・Mさんお得意の「ブロードウェイ・サースト」は、今回は、まぁ、置いておくとして。
飲みながら、四方山話を進める。が、相手は最早気を遣うことも無くなったMさん(『ジャックポット』のスタッフ達の他に気を遣わずに居るのは唯一このMさんだけである)では無くTさんである。但し、話のネタの切っ掛けはMさんであるのが私の天邪鬼なところ。
「そうそう、このコ、ガンダムが好きだって話で思い出したんですけどね」
「ええ」
「私の前の職場の近くに『ガンダムカフェ』ってのがあったんですよ」
「何ですか?それ」
「あのね、ガンダムの等身大の胸像が置いてあるところがあって、そこの頭のところにある階にカフェテリアがあったんですね」
「はいはい」
「実は前の職場の歓送迎会で、100人近くが来る飲み会があったんですよ。そういう人数ですと入れるところが殆んど無くて、唯一使えるのがその『ガンダムカフェ』だったんですよね。立食でしたんで」
「あ、成る程ね」
「最初の年は迎えて貰う方だったんで食べるものもそこそこ貰えたんですけど、次の年はお客さん扱いなんかして貰えないでしょ?だから、飲み物を持って、ガンダムの前の手すりに寄り掛かって飲んでたんですよね。「何でガンダムとにらめっこしながら飲まなきゃならないんだ」ってブツブツ言いながら」
「Mだったら嬉しいかもしれませんね」
確かに(そちらを向くことは無かったが)カウンター越しに興が乗っている様子が伺える。

そのとき、テーブル席から注文が飛んだ。
「あ、また「グラスホッパー」の注文」
「“また”って言うとよく来る方なんですか?」
「ええ、ベースから来てる外人さんですけど、「グラスホッパー」ばっかり飲むんですよ。この間なんか5杯空けましたね」
「はい?「グラスホッパー」5杯ですか!?」
「○○さんなんかだったら甘いもの苦手ですからそんなに飲めないでしょ?」
「5杯どころか・・・・・・」
1杯も空けられるかどうか。「グラスホッパー」はクレーム・ド・カカオに生クリーム、風味付けでペパーミントを使った菓子の如き甘い味のカクテルである。考えるだに胸焼けしそうだ。
カウンターの向こう端で「グラスホッパー」が調えられた様である。Tさん、客の下に「グラスホッパー」を運ぶ為、その場を離れる。
すると、Mさんがぽつり。
「あのヒト、「グラスホッパー」しか飲めないんですよ」
「あ、成る程ね」
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2008年05月06日

更けゆく晩春の宵に(其の伍)

『パロット』に入ると、カウンターの中に居たのはYさんひとりだけであった。
「あらま、今日はおひとりで?」
「Aさん(『パロット』のTさん)、後で来る様なこと言ってましたけど、一寸判らないですね」
「そうですか。それはまた、忙しいでしょ?」
「いいえ、大丈夫ですよ」
今はカウンターに外国人客2人だけであるので良いやも知れぬが。
取り敢えず、土産を渡す。
「じゃ、これ、後で召し上がってください」
「ありがとうございます。・・・・・・これは何ですか?」
「これ、空港限定ってことで売ってた『クイーンアリス』の「スティックケーキ」です」
「『クイーンアリス』ですか?」
「そうそう。Yさん、「料理の鉄人」って番組はご存知です?」
「あ、聞いたことあります」
「それの初代の“フレンチの鉄人”の石鍋シェフのところで作ってるケーキですよ。あそこ、パティスリーも結構有名ですんで」
「あ、そうなんですか」
「ひょっとしたらAさんは此処のこと知ってるかもしれませんね。あのヒト、この間の『資生堂パーラー』も反応してましたし」
「あ、この間のチーズケーキですね。あれ、美味しかったですね」
「召し上がったんですか?」
「Aさんからひとつ頂きました」
「それはそれは・・・・・・」

此処は、元々カラオケクラブである。故に、『ジャックポット』や『グランキャフェ』の如くメニューにバラエティがある訳では無い。
此処に来ると大抵「ジントニック」か「スプモーニ」を頼んでいる。此度は「ジントニック」を頼んだ。
飲みながら、最近の景気などについてボツボツ話をする。
一区切り付いたところでYさん
「煙草吸っても良いですか?」
「あれ?吸うんですか??」
「ええ、まぁ」
注文が一段落してしまえば手持ち無沙汰である故、これは別に差し支えは無かろう。頷くと、Yさん、煙草に火を付ける。ゆっくりと吸い込み、美味そうに紫煙を吐く。既に『ジャックポット』で吸っている私であるので、それを見ても別にどうと言うことも無い。

カウンターの先客は延々と語り合うのみ。
カラオケの機械も手持ち無沙汰のように見える。
「歌いませんか?」
と、手元にコントローラーが差し出される。
早速、検索を掛ける。さだまさし氏の曲もそれなりに入っているし、中島みゆき女史の曲も結構ある。が、先客は外国の方である故、そのような曲を聴いても判りはすまい。
洋楽で検索を掛ける。私が知っている曲も思ったよりも多い。
好きな曲も様々あるが、最近(・・・・・・と言っても私が歌えるのはせいぜい1990年代の曲までである)の曲では好き嫌いもあろう。ならば“ちょいと新し目のOLDIES”位の方がウケも良かろう。
「(They long to be)Close to you(邦題:遥かなる影)」をリクエストする。例えて言うならば外国人が日本人の前で「翼をください」を歌うようなものである。好き嫌いを超えたスタンダードと言う趣であるので、耳汚しではあろうが何とか聞いてもらえる範疇であろう。
前奏が始まる。
マイクが渡される。
頃合いを見計らい、歌い出す。

Why do birds
Suddenly appear?
Everytime you are near
Just like me
They long to be
Close to you・・・・・・

この曲は、私がそらで歌える英語の数少ない曲のひとつである。とは言うものの、流石に知らぬ人の前で歌うことには慣れては居らぬ故、時折モニターに映る歌詞を確かめながら歌う。
此度は何とか歌い切った。
Yさんと、隣の客から拍手が上がる。
「上手いですね」
とは、Yさん。間髪入れず言葉が出るのは矢張り慣れであろう。
「ま、こういうのは耳で覚えたまんまですからね」
と、返す。
隣の客からも声が掛かる。
「アンタの英語、結構良かったわよ」
「そらまーどーも」
・・・・・・申し上げておくが、この会話のみは英語である。私の方は完璧な“ジャパニーズイングリッシュ”であるが。

手を洗いに立ち、席に戻ると花火の時間が間近であったらしい。
Yさん、2人連れにそれと告げる。
2人、席を立ってYさんが開けたドアから外に出る。
「あのお2人、ベース(基地)から来てるんですよ」
「あ、そうなんですか」
最近、増えたな。良いことだ。
「で、今から花火ですか?」
「もうそろそろ時間ですね」
「じゃ、私も『グラン』へ行こうかな。花火の時間だったら空いてるでしょ?」
「そうですね」
チェックをする。ドリンク1杯と1曲歌ったのみであるので、この日の勘定は¥900。何せ女性客の場合チャージは無いので・・・・・・。
「じゃ、どうも。また、時間があったら戻ってくるかもしれませんけど」
「はい、お待ちしてます」
飛び降りるように席を立ち、そのまま『グランキャフェ』へと向かう。
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更けゆく晩春の宵に(其の肆)

『按針』に入ると、カウンターの入口近くの席には『パサージュ』の『K』のお2人が座っていた。
「こんばんは」
「あ、こんばんは」
「いつもありがとうございます」
「いえいえ」
この日は季節限定ショップの『U』で買い物をしたばかりであった。Fさんから、Aさんにそれと告げられたようである。
「お飲み物は?」と、Tさん。
「あ、お茶で」
「良いんですか?」
「ま、ね。先刻『シェヘラ』でも一寸飲んだからね」
「それにお昼の2合もありますよね」
と、昼に話をしたばかりのFさんも加わる。Tさん、またそんなに飲んだのかとばかりに少々呆れ顔で
「あがり一丁!」
「応!」
と、寿司屋の威勢の良さは何処も同じ。

注文が一段落しているので、Tさんは私の隣に立っている。
こうなると、彼女の服装が和装ばかりのスタッフの中では異彩を放って見える。何となれば、着ているのは『ジャックポット』の制服であるのだ。
「Tさんさぁ」
「はい?」
「こんだけ『按針』に応援に来るんだったら作務衣誂えたら?」
「ヤですよぉ。また戻んなきゃいけないんですし」
「着替えりゃ良いじゃん」
「ヤですってば。ま、何着ても似合いますけどね」
自分で言うかね・・・・・・あせあせ(飛び散る汗)
「でさ、今日は何が良さそう?」
「今日ですか・・・・・・やっぱり旬の縞鯵と平目と鯛ですかね」
成る程、白身が良いのか。
Aさん、話に割って入る。
「『シェヘラ』の飲み比べは何が良かったですか?」
「うーん、私の好みですとやっぱり「純米酒」ですね。あの中では一番日本酒の美味しさが味わえましたし」
Fさんも話に加わる。
「あー、やっぱりお酒の好きな人は「純米」って言いますねぇ」
Aさんは、隣で納得したようにうんうんと頷く。

1貫食してから慌てて撮った「平目」お茶をひと口飲んでから、早速握りを頼む。
先ずは「平目」。
私の寿司の好みは光り物と白身である。殊に「コハダ」には目が無い。が、残念ながら『按針』には「コハダ」は無い。
「此処に「コハダ」があればすっ飛んで来るんだけどね」
「こっちじゃあんまり食べないですからね。光り物も季節が合えば「鰯」位はありますけど」
ガリを摘みながら話をし、握りが来たところでひょいと摘んで醤油に付け、食す。あっさりとした白身が旨い。
これだけの白身ならば塩と酢橘で食してみたいものだ。ちと前に流行った白身の食べ方であるが、質を選りすぐった白身ならば醤油よりも塩酢橘の方がダイレクトに旨味を楽しめるので好きなのである。
「鯛」は忘れずに撮影したが「縞鯵」は撮りはぐった次に「鯛」を頼んだ。
和食処で食す刺身の「鯛」はこりこりした食感が身上であるが、寿司の「鯛」は酢飯と馴染むようにむっちりとした食感になるよう調整している。
ここの「鯛」も噛み締めるとむちっとした歯応えが返ってくる。この食感が実に心地良い。旨味のエキスを舌で存分に味わい、喉にするりと滑り落ちる感覚を楽しむ。流石に“魚の王”と呼ばれる所以である。

数人の客が入ってきた。入口近くのテーブルに席を占める。
すると、◆◆さんがその中にいらっしゃるのが見えた。◆◆さんも私に気付いた。
「こんばんは」
「あ、お久し振りです」
「今回は何泊ですか?」
「1泊です。流石に今はお休みが取れないんで・・・・・・。そのうちゆっくりと連泊で来る積りではいますが」
(実際、8月に連泊をすることにした。“病気の入院”の積りでの連泊である。故に、あまり短いと効果は無いであろうとこじ付け、次回は“常部屋”に4連泊と今までに無い長期の連泊にした。流石に人が多いであろう盆の日程には掛からぬようにはしたが)
「そうですか。じゃ、ごゆっくり」
◆◆さん、お連れが占めたテーブル席に着く。

次は「縞鯵」として、その次は何にしようか・・・・・・それ程食欲がある訳で無し、巻物はちょいと重いから握りをもう1種類貰おうか、いやいや、それでは“4”種類になるから縁起が悪い。もう1種類あった方が良かろうか・・・・・・。
取り敢えず「縞鯵」を頼む。握りが目の前に来る。ひとつを頬張る。すると、入口に2人連れの方々が入ってくるのが見えた。AさんFさんのお知り合いの方々である。
テーブルもカウンターも席は埋まっている。私の荷物を退かしたとて、席はひとつしか空かぬ。
今回はだらだらと食べていても仕方無し、最早食事は良かろうともうひとつを急いで頬張り
「じゃ、お勘定ね」
「え?もう良いんですか?」
「うん、そんなに食欲無いし」
荷物を抱えてさっさと席を立つ。
「すみません」
とのお声も掛かったが
「いいえ。もう充分ですから」
と応えを返す。
「すみません。○○さん、もっと食べたい様だったのに・・・・・・」
「そんなに食欲がある訳じゃないしね。また来るワ」
「はい。Taさんもお待ちしてます」
「Taさん?」
「はい、Taさん」
隣でにこやかに会釈をするのは、以前より顔馴染みで短い会話も交わしたことのある『按針』の女性スタッフである。『アムステルフェーン』の“Taさん”というと『ジャックポット』のI君であるが、こちらにも“Taさん”が居たのか・・・・・・。
「そう。じゃ、Taさんにもまたお目に掛かりに」
「はい、お待ちしてます」
とは、当のTaさんである。

煙草を取りがてら『ジャックポット』に戻ろうかとも思ったが、考えてみれば煙草の残りはあと2〜3本。『シーブリーズ』にも煙草は置いてあるが今吸っている銘柄は無いし、他の馴染みの銘柄はあるが酒も些か入っていることとて買いに行くのも面倒である。
『ジャックポット』に落ち着いてしまえば動くのも億劫になるであろう、ならばいっそ煙草無しで“挨拶回り”をしてしまおうかと思い立ち、先ずは『パロット』へと足を向けた。
posted by daydreamer at 21:31| Comment(0) | TrackBack(0) | Amstelveen Story | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

更けゆく晩春の宵に(其の参)

ふと、新規に設置されたテレビに目をやると、Mバーテンダーの置き土産である「シャアザク」がちょこんと座らせてあるのに気が付いた。
「そう言えば、あのコ、ガンダム好きだって言ってたっけね・・・・・・」
「好きなだけで詳しい訳じゃないですけどね」
I君、相変わらず容赦の無い物言いである。
思い出して話題にしてみた。
「そう言えばさ、前の職場の近くに『ガンダムカフェ』ってのがあったのヨ」
「何ですか?それ」
「あのね、胸から上だけだけどさ、等身大のガンダムが置いてあるところがあってね。其処、下の階はいろんなモンが展示してあって、上の階がカフェテリアみたいになってるんだワ。んで、職場の飲み会で大人数が参加するのがあったんだけど、他にそれだけの人数が入るところが無いんで何時もその飲み会だけはその『ガンダムカフェ』でやってたんだよね・・・・・・」
うんうんと2人共頷いていたが、話の途中でゴトンという音がした。
どうやらテーブル席の客がグラスを引っくり返したらしい。
Ha君、おしぼりを何本もつかんですっ飛んで行く。
I君も盆を抱えてテーブル席へ行く。
・・・・・・大したコトは無かったらしい。客は隣のテーブルに移り、I君はテーブルの上のものを移してから代わりの飲み物を調えにカウンターに入る。Ha君はその場を拭き清め、両手いっぱいのおしぼりを抱えて戻ってくる。
「大丈夫だったの?」
「はい、お客さんには殆んど掛かってませんでした」
「で、椅子は?」
「・・・・・・まぁ、それも何とか」

ひと息ついた頃、『グランキャフェ』のT御姉様が入って来た。
何やら書類を広げ、I君と打ち合わせをしている。
打ち合わせが終わったようで書類を畳む。と同時にくるっとこちらを向き
「こんばんは」
「はい、どうも」
「後でお待ちしてます」
「はいはい」
逃げられぬとは思っていたが、真逆にこのような形で見つけられるとは思ってもいなかった。
その場の繋ぎとして「チーズ盛合せ」を追加し、ひとつふたつ摘む。・・・・・・と、『按針』に応援に行っていたT姐さんがふいっと入って来た。
どうやらワインの注文があったらしい。グラスが用意され、赤ワインが注がれる。それを待っている間、ふと思いついて声を掛ける。
「今『按針』どう?」
「満席です」
「あ、そう」
「空いたら声掛けましょうか?」
「うん、お願い」
Tさん、赤ワインのグラスを持って出て行く。
そうこうしているうちに、遅出であったEちゃんが入ってくる。
「お、久し振り」
「お久し振り・・・・・・ですか?」
「ま、1ヶ月振りだし。あのさ、後でお土産貰っといて」
「あ、はい」
「Eちゃん甘いモン駄目だって聞いてたから、さ」
「はい、僕、駄目ですね」
「“ちょいと高級なふりかけ”みたいなの持ってきたのヨ。オカズ足りないときにでも使って」
「ありがとうございます。今日はちょうど・・・・・・」
オカズが足りぬ日であったらしい。此奴は結構金欠状態であることが多いと聞いたので・・・・・・。
飲み物が無くなった。「スプモーニ」を頼んで喉を潤し、チーズをまた一片摘む。
すると、またTさんが来た。ワインのお代わりのようで、ワイングラスを手に持っている。珍しくもHa君がワインのボトルを手に取り、コルクを抜く。新たに用意したワイングラスにワインを注いだのであるが、Tさん、ワイングラスを見て、押し戻す。I君が新しいボトルを開け、ワイングラスを用意する。
「・・・・・・どうしたの?」
「コルク片入っちゃったんですよ」
Tさん、元のワインボトルに使ったコルクスクリューを持ち上げて見せる。成る程、スクリューが貫通している。
ワイングラスを持ち、急ぎ去るTさん。『按針』もなかなか繁盛しているようである。

Ha君やEちゃんを相手に他愛も無い話をする。が、そうこうしているうちに『ジャックポット』にもぼつぼつと客が入ってくる。この日は珍しく入場していた客が多く、夕食を終えて花火を待つ間に一寸、と行った風情の客が多い様であった。
スタッフも忙しくテーブルを回り始めた。そして、切りの良いところでHa君は呼び込みに行った様である。流石に此処に通い出してから2年近くにもなる為、私もこういう状況には慣れている。手持ち無沙汰になることも無く、チーズを摘んで酒を飲む。
すると、またもやTさんが顔を出した。
「○○さん、席空きましたよ」
「はいよ」
慌ててグラスを空にし、それ程時間は掛からぬと思ったので煙草とライターを“席取り”がてらに置いて『ジャックポット』を出る。
posted by daydreamer at 20:06| Comment(2) | TrackBack(0) | Amstelveen Story | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月29日

更けゆく晩春の宵に(其の弐)

「それじゃ、今のうちに渡しておこうかな?」
「何ですか?」
「これ」
と、取り出したのは、羽田空港で買い求めた『クイーンアリス』の「空港限定スティックケーキ」である。甘いモノが苦手な私であるので自分で食すことは無いが、限定モノとあってはせめて購入だけでもしたいという欲求がある。それを満たすのに、『アムステルフェーン』のスタッフは打って付けの“人身御供”だったりもする。無論、そうは言っても矢張り甘いモノが苦手なEちゃんに無理強いをしたりするコトは無いが。
「へぇ、美味そうですね」
「アタシじゃ食べられないから判らないけど、間違いは無いんじゃないかな?『クイーンアリス』のスイーツだし」
「そうなんですか」
「ま、此処のシェフもそれなりの人だしね。あのさ、「料理の鉄人」って番組があったのは知ってる?」
「・・・・・・?」
此処で話が途切れてしまった。後でよくよく考えてみれば、この中で年嵩のI君ですら20歳代の中盤であるので、幾ら有名番組とは言え随分前に放映された深夜番組の話をするのは些か無理があったのやも知れぬ。
「ま、6本あるからさ、3人で分ければいいっしょ。Eちゃんは確か甘いモノ駄目だって言ってたし」
「ああ、Eは駄目ですねぇ」
「だからさ、Eちゃんにはこれ買ってきたのよ。後で渡しといてやって」
と、取り出したのは「錦松梅」。一応パッケージには佃煮と書いてあるが、言ってみればふりかけの“ちょいと高級”バージョンである。
「ありがとうございます。喜びますよ」
「なら良いけどね」
「で、このケーキは・・・・・・」
I君、何やらケーキを見詰め、指し示しながら言う。
「これはHaちゃんだろ、こっちがTさん、で、俺、俺、俺、俺」
をいたらーっ(汗)

グラスが空になった。
「お代わりは如何ですか?」
「それじゃ、「ブルドッグ」を」
「畏まりました」
I君、カクテルを調えにその場を離れる。
残ったHa君と私で話を始める。
「私ね、スノースタイルの塩が苦手なのよ」
「スノースタイル、ですか?」
「そう。あのさ、カクテルグラスの縁に塩とか砂糖なんかが付いてるのがあるでしょ?あれがスノースタイル」
「詳しいですね」
「・・・・・・って言うより、こういうところに来ると中の人(バーテンダー諸氏)があれこれ説明してくれるんだよね。お蔭で覚えちゃって」
「そうなんですか」
「そうそう。んで、話戻すけどさ、このカクテルも本来は塩でスノースタイルにして「ソルティドッグ」ってのが普通なんだけどね、私は大抵塩抜きで頼むんだワ。そうすると「ブルドッグ」って名前に変わるんだな」
「はい」
「だからさ、「マルガリータ」なんかもスノースタイル無しで頼むことが多いんだよね」
「はい」
ここで「マルガリータ」の逸話をポツポツと話す。昔のカクテルコンクールで優勝してから広まったこと、名称の由来は亡き恋人に捧げたカクテルであるので恋人の名を付けたこと、彼女が亡くなったのは猟に出たときに流れ弾に当たったということであるらしい・・・・・・等々。
無論これもあちらこちらでの聞きかじりであるが、Ha君、うんうんと頷きながら聞いてくれる。興味深げにして貰えるとこちらも話甲斐があると言うもの。
・・・・・・が、「ブルドッグ」のグラスを手に戻って来たI君がひと言。
「でも○○さん、こいつ、そもそも「マルガリータ」が何だか知らないと思いますよ」
和んでいた雰囲気をぶち壊すなよ・・・・・・。
posted by daydreamer at 22:22| Comment(0) | TrackBack(0) | Amstelveen Story | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

更けゆく晩春の宵に(其の壱)

・・・・・・此度ばかりはこのカテゴリーを作っていて良かったとつくづく思ったものであった。何となれば、此度の場合あまりにも『アムステルフェーン』の各店舗での出来事が交錯し合っており、店舗毎に分けることが出来難いのである。・・・・・・尤も、呑んだくれは例の如く1階部分を這いずり回っていただけであるが。
さて、それでは“交錯し合った『アムステルフェーン』の夜”をご覧頂くとしようか。

その日、私は『シェヘラザード』で「香露3種飲み比べ」を頂いてから『アムステルフェーン』へと向かった。この日は「フォークダンスフェスティバル」なるイベントの前夜祭とあってか人通りが非常に多かった為に“颯爽と自転車を駆って”という訳にはいかず、自転車をカラカラ押しながらテクテク歩いていったのであるが。
『アムステルフェーン』に到着し、自転車を入口に停め、海側を回って何時もの如く『ジャックポット』に入る。海側の入口は、店内の様子が見えるのが良い。
「いらっしゃいませ」
と迎えてくれたのは、店長I君とバイトのHa君であった。

「Tさんは例の如く『按針』で助っ人です」
と、I君が言う。
「あ、そう」
とこちらは気の無い返事。
一応は古馴染みということで気を遣ってくれたのであろうが、今迄も休みの日に行き合ったこともあるし、特に顔を合わせずとも今となっては別にどうということもあるまい。
「今日は何処かへ行って来たんですか?」
「うん、『シェヘラ』で「飲み比べ」飲んで来た」
酒の匂いでもしたのであろうか?
「で、何にしましょう?」
「う〜ん、そうだね・・・・・・一寸飲んで来たから軽めのものにしようか。・・・・・・「モスコーミュール」ね」
「畏まりました」
取り敢えず今回は「モスコーミュール」からI君、手際良く「モスコーミュール」を調え、出す。
ん?ビルドのこの位であればHa君が作るものとばかり思っていたが・・・・・・??
「Ha君は作らないの?」
問うと、I君が割って入り
「こいつ、レシピ覚えてこないんですよ」
「あれ?そうなの?」
「はい、僕、覚えないですねぇ」
Ha君は相も変わらずゆったりした口調。
「やっぱり、メニュー覚えてから試作して作れるようになってからでないと・・・・・・」
成る程。
これで新入りが作る場面に遭遇しないことに合点がいった。
I君、意外と慎重派なのだな。
バイトに“取り敢えず”作らせて経験を積ませるMさんとは対照的である。
(尤も、私以外の客にそれをさせたコトは無さそうであるが)
「僕、今、ディーラーだけでいっぱいいっぱいですから」
というHa君であるが、次の帰国では何かを飲ませてくれるであろうか?今からそれを楽しみにしておこう。

ふと顔を上げると、大画面のテレビがサッカーの試合を映しているのが見えた。
「何、テレビ入れたの?」
「放送は入らないですけどね」
「?」
聞けば、ビールメーカーの「ハイネケン」のキャンペーンでサッカー関連のものがあり、それに伴って貸し出されたのだとか。今映っている映像も録画のものだそうである。
ちなみに、キャンペーンの内容はビールを決められただけオーダーするとくじ引きが出来、グッズの景品が貰えるというものだそうな。ビールをこういう場で飲まない私には縁の無い話である。
・・・・・・などと話をしていると、先客がどうやらくじ引きの権利を得たらしい。Ha君、くじの箱を持ってテーブル席に行く。なにやらのグッズが当たったらしく、今度はその景品をもってテーブルに走る。
posted by daydreamer at 15:12| Comment(1) | TrackBack(0) | Amstelveen Story | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月24日

ペース配分・・・・・・(其の拾)

アルコールを抑えた「XYZ」を飲みながら
「そうそう、早く『ジャックポット』に帰んなきゃなぁ・・・・・・いい加減精算もしなきゃね・・・・・・」
と独りごちたとき、電話が鳴った。
Mさんが電話を取る。ふた言、三言話して電話を切り
「『ジャックポット』からですよ。○○さん、居るかって」
いつもであれば、ラストオーダーの時刻には戻ってきてラストのドリンクを飲んでいるのである。それが、今回はラストオーダーの時刻を過ぎても未だ戻って来ない。勘定も済ませておらぬし、心配するのも当然であろう。
「ありゃま。じゃあ、本当に急がないとね。それにしても、こんなに遅くまでここに居るとは思わなかったなぁ・・・・・・」
「だから聞いたんですよ。『ヴィノ』に行くんですか、って」
「あ、そうか」

「でもね、一寸前迄はこんな風に此処のカウンターで飲むなんて思ってもみなかったよ」
「そうですか?」
「ま、ね。だってさ、アンタが来る前に此処に来たのは『ハーフェン』が出来る直前の3月でね、ほら、Tさんが此処に居た頃」
「あ、そう言えば居ましたね」
御姉様が引き取って答える。
「○○さん、Tさんが休みの日狙って来るでしょう」
「そう言われても不思議じゃないよね・・・・・・ここまで重なると。それは置いといて、そのときも飲んでたのは端っこの小っちゃいテーブルでね」
ふたり、声を立てずに頷く。
「こっちも居るの知らないじゃん。でね、席についてボーっと外を見てたらね、こっち(と左手を斜め頭上でヒラヒラさせる)から「○○さん♪」って呼ばれたんだよね」
「その「○○さん♪」って言い方がムカつきますね」
「もう、慣れたよ」
幾ら何でもTさんとて人は選んでいるぞ?怒りそうも無いのを。
確かに人によってはこの接客は「馴れ馴れしい」と感じるやも知れぬが、私の場合、これもソレの個性として楽しんでしまっているのだ。何ら問題は無かろうに。
・・・・・・と言うより、何故アンタがムカつくのだ?Mさん。

最後のひと口を飲み干したときには、既にテーブルにも客は居なかった。
「さてさて、長居したね。じゃ、お勘定を」
「畏まりました」
時刻も時刻とて、他のスタッフはもう帰ってしまったのであろう。普段であればカウンターにでんと鎮座しているMバーテンダー自らが勘定書を手に取り、レジを打つ。その日の勘定¥2,030を支払うと
「じゃ、急いで『ジャックポット』に行かなきゃね」
と、バッグを肩に掛け直す。
ふたり、寒い店外迄出て送ってくれた。
「じゃ、次は来月に」
「はい、ありがとうございました。良いお年を」
「あ、そうか・・・・・・良いお年を。また、宜しく」
「はい、お休みなさい」
ハウステンボスでの「XYZ締め」は、これが二度目である。
では、自らに引導を渡すときは如何致そうか?
聞けば、「XYZ」によく似たレシピの「ラスト・キッス」なるカクテルがあるのだそうな。このふたつを続けて飲むのも面白いかも知れぬな。
愛する彼の地と、最後に別れの接吻を。
・・・・・・うーむ、自分で言ったことながら歯がガタガタに浮きそうな台詞だ・・・・・・

一歩、二歩と足を進める。・・・・・・と同時に、脱兎の如く『ジャックポット』に飛び込む。
「ゴメン!遅くなった!!」
もう、店内は片付いており、後ろの棚にも白い布が掛けられている。店長Taさん、レジの前に居り、私の顔を見てホッとしたような表情を見せる。
「で、幾ら?」
「丁度¥5,000です」
「ホントに?」
こちらが驚いた。何せ、財布の中にあるのは一万円札と五千円札が一枚ずつ。小銭も心細く、¥5,000ならば勘定に面倒が無いと思っていた矢先であったのだ。
「嘘は付いて無いですよ」
頬を膨らませ、口を尖らせてI君が言う。
「誰も嘘とは言わないよ。じゃ、これね」
五千円札を渡す。そして、ずっと置かせて貰ったコートを羽織る。
「じゃ、本当にゴメンね」
「いいえ」
「それじゃ、次は来月ね。正月明けの3連休」
「はい、お待ちしてます」
次に来たときには“預け金”を渡しておき、遅くなったらそこから精算をして貰うことに致そう。そうすれば、此度の如くレジが締められずやきもきすることも無いであろう。
「じゃ、また」
「はい、お休みなさい」

メインのライトアップは流石に消えていたが、それでも、あちこちのイルミネーションが美しい夜であった。
陶然としながら宿泊している『デンハーグ』迄歩き、玄関前で自転車をオーバーナイトで借りていたことに気付いて慌てて『アムステルフェーン』へ駆け戻る。日付はとうに変わっていたが、『パロット』からはまだまだ灯りが漏れ、笑い声が聞こえる。
自転車に乗って『デンハーグ』へと戻る。冷たい風が火照った頬に心地良い。
『デンハーグ』に着き、自転車を留め、鍵をコートのポケットに入れてホテルに入る。エレベーターへ向かう途中、ふと『ヴィノテーク』を見ると、ドアは既に閉められていた。

ご愛読に感謝を
posted by daydreamer at 18:17| Comment(0) | TrackBack(0) | Amstelveen Story | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ペース配分・・・・・・(其の玖)

そこへ(折悪しく?)女性スタッフの御姉様が通りかかる。
私はド近眼の上、『グラン・キャフェ』はムーディーな雰囲気を出す為か照明がかなり絞ってある。必然的にネームプレートなど読み取ることは出来ぬ故、よくお見かけする割にお名前を存じ上げぬ。
「そう言えばさ、あの方何て仰るの?」
「ラブです」
「は?」
思わず大声を出してしまう。
「どうかしたんですか?」
「いえね・・・・・・此処、暗いでしょ?」
「はい」
「で、私、近眼ですよね」
「ええ(?)」
「だからね、ネームプレートを読めないんで「お名前は何て仰るの?」って聞いたら「ラブです」って答えるもんで・・・・・・」
「ああ、成る程」
笑いながら答える。
「お好きに呼んでくださって構いませんよ。みんな好きなように呼んでますから」
幾ら何でも“只の客”の分際でそういう訳にもいくまいが。“常連さん”ならばともかく。

「でね、この間来たときMさんに「生え際後退した?」って聞いてエラク怒られましてね」
「え?それくらいなら怒らないでしょ??みんなに“禿げ茶瓶”って言われてるのに」
「(それもまたエライ言われ様だな)いえね、それで帰るときに「勘定10倍貰っとけ!」って・・・・・・ま、どっちも冗談だって解ってますけど言うんですよ。そしたら、勘定書受け取った方が本気にしちゃって「どうしましょうか?」ってオロオロしてたのがお気の毒でね・・・・・・」
これには、Mさん迄もが驚いた様子。
「誰だろう、それ?」
アイツか、コイツかと様々に名前が挙がる。
そんな中で、この御姉様がひと言キッパリ。
「でも、それは真に受けるのが間違ってますよね」
ここでMさん、ふと表情を変える。
「そう言えば○○さん、もうすぐお誕生日でしたよね」
「そう言や、そうだね」
「お誕生日おめでとうございます」
「おめでとうございます」
予想もしておらなんだこと故、驚く。
「ありがとうございます」
ふたりともニコッと笑顔を見せる。こんなときにこの話題を振るのもどうかな、と少々躊躇したが・・・・・・
「そうそう、去年、こちらに「Birthday Cocktail」を作って貰ったんですよ。華やかな可愛らしいカクテルでね」
「まぁ、そうなんですか」
「だけど、後がね・・・・・・ソレ出してから、グラスの底のほうを指差して「ここ黒くした方が良かったですかね」ってぶち壊すんですよ。「○○さん、腹黒いから」って」
「事実じゃないですか」
「だから、アタシは毒はあっても腹黒くは無いっつーの」

テーブル席から、フードのオーダーが来た。
若い男性スタッフが、オーダーを通しに来てそのまま調理に入る。私の席(カウンター右端付近)の前は、どうも調理器具がある場所である様子(何せ壁際には電子レンジも鎮座ましましている。こういう場所が落ち着くとは、商売柄とは言え因果なことで・・・・・・)。電子レンジで何やら温め、皿に盛り付ける。Mさん、横から手を出して盛り付けを直しながら何やら指導をしているようである。
ここでふと、この男性スタッフが目に入った。
『ジャックポット』の“顔担当”H君とよく似た風貌のスタッフである。思わず、言葉が口を付く。
「ここ(『グラン・キャフェ』)、結構イケメンのスタッフ揃えてるよね・・・・・・」
一心不乱の男性スタッフに、Mさん
「ほら、イケメンだって」
「ありがとうございます」
「イケメン?」
ニヤニヤしながら傍らのスタッフの顔を見る。照れた様に、彼のスタッフは俯く。
「イケメン?」
更に顔を覗き込む。
「これ、止めんか」
幾ら何でもこれ以上は可哀想だろうが。
くるっと御姉様に向き直り、話しかける。
「まぁ、ね。コレ・・・・・・コレじゃ拙いな・・・・・・このバーテンダーさんもね」
Mさんを指差す。
「ツクリは決して悪く無いとは思うんですよ。でもね、そこはかとなく漂うお笑いテイストが強過ぎてですね」
「M、お笑い系ですもんね」
即座に肯定する。
「でもね、コレも、初めて『ハーフェン』の頃に会ったときにはひと言も発しなかったんですよ」
確かにあのときはTさんとずっと話をしていたのだが、それでも、俯いてひとり流しを片づけ、シェイカーを振り、ミキシンググラスとバースプーンを握り・・・・・・なんと真面目で無口な男性スタッフよ、必死で頑張っているのだなぁと好感すら持っていたのだが・・・・・・。それが何時の間にやらお笑い系であることが判明し、また、呆れるようなエピソードにも事欠かぬし(夏にオレンジ広場辺りで会ったときなど顎の下に汗疹をびっしり作っていたものである。あの汗疹は酷すぎて船の中での転寝でうなされた程であった)、あの折の好感など今となっては思い出すべくも無い。
「そのままずっと喋らなきゃ良かったのにね」
ご尤も。

「ところで、ラストオーダーですけどどうします?」
「あ、もうそんな時間か・・・・・・『ジャックポット』の方はどうしようかな?」
「この建物は、みんな23:30がラストオーダーです」
見ると、時刻は23:30を回ってしまっている。
「じゃ、いいか。あと1杯、貰っていくワ」
「この後『ヴィノ』でも飲むんですか?」
「うんにゃ、飲まない飲まない」
「それじゃ、何にしましょう」
「そうね、「XYZ」、貰おうかな」
「それは、何かとの決別ですか?」
どきりとした。
が、未だ決まっている帰国はあと1回ある。この状態ならば、決別には、未だ、ならぬ。
「何でや?アタシが都内の行き付けで「XYZ締め」って言われる注文してるのは知ってるでしょうに」

Mさん、カクテルを作りにカウンターの向こうの方へ行く。
バーテンダーというのは、ある種のショウ・マンだと思っている。
カクテルを作るところから、客はカクテルに酔わされるのだ。
それを知ってか知らずか、ここハウステンボスのバーテンダー諸氏もそれぞれシェイクのスタイルを持っているところが面白い。
例えば、『ヴィノテーク』のI氏は、僅かに背を反らすものの正中に重心をかけた直立不動に近いスタイルで、最もオーソドックスと言えるであろうものである。N氏はI氏のスタイルと同様の直立不動スタイルであるが、こちらはもう少し背を反らし、伸び上がっているように見える。
伸び上がると言えば、『ジャックポット』のTa氏である。初見の頃はオーソドックスに見えたスタイルも、よくよく見ればかなり独特のもの。両足の爪先に体重をかけ、前方に重心を置いて伸び上がり、まるで放り投げるかの如くにシェイカーを振る。S君は、顔の前でシェイカーを扱う他の方とは違い、胸元にグッと引き寄せて振るスタイルである。・・・・・・T女史は“魅せる”のは今少し先であろうな。
そして、『グラン・キャフェ』のM氏のスタイルもまた独特のものである。こちらは『ジャックポット』のTa氏とは正反対に、重心を落としてやや踵に体重をかけて振るのがスタイルである。・・・・・・が、振っている途中で立ち上がり、こちらに歩いてきたのにはビックリした。このオトコ、このような芸当も出来たのか。
「XYZ」が、グラスに注がれる。
目の前に出てきたそれを、口に運ぶ。・・・・・・何だか妙にジュースの味が濃いような・・・・・・以前『カフェ・デ・ハーフェン』で貰った(注ぐときに溢した)ものともちょいと味が違うか??
「どうですか?それ」
「うん、美味しい」
こちらとしてはそう答えるより他は無い。
「前にブログで「アルコールが立ってきた」って書いてあったでしょ?」
「書いたね」
「だから、今回はアルコールを一寸抑えたんですよ」
そう言えば、コイツは「どんな悪口が書いてあるか」チェックする為に拙ブログを読んでいたのであった。が、コイツが読んでいるのはlivedoor版であろうか?それともSeesaa版であろうか?何せ同じ記事を2つのブログで書いているので、どちらを読んでいるのやら見当も付かぬ。
posted by daydreamer at 12:07| Comment(0) | TrackBack(1) | Amstelveen Story | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ペース配分・・・・・・(其の捌)

『グラン・キャフェ』に入ったのは、既に23:00を回った時刻。
予定していた時刻よりもかなり遅い。

こんな時刻になってしまった場合、以前であれば『ヴィノテーク』へ行く時間も考慮して『グラン・キャフェ』は遠慮していたことであろう。が、現在の私は『ヴィノテーク』への入店を躊躇する心理状況である(別に店やスタッフがどうのこうのという訳では無く、半ば以上に狂いかけているメンタルの部分が原因である)。・・・・・・となると、静かに飲むには矢張りここ『グラン・キャフェ』をおいて他には求められぬ。
このようなことを思うとき、一斉に営業を終了してしまう(・・・・・・とは一概には言い切れぬ部分もあるが)『アムステルフェーン』の営業の形態が恨めしくなる場合がある。街場のバーなぞ、5:00迄の営業をしているところも数多いではないか。そこまで遅く営業せずとも、せめて1時間程開店・閉店の時刻を遅くして時間差を付けては貰えぬであろうか・・・・・・と思わぬことも無い訳では無い。スタッフには深夜に及ぶ勤務で迷惑であろうか、とも思うが。

訳の判らぬ話はさておき。

「遅かったですね」
と声を掛けてきたのは、いつものバーテンダーM氏。その声に振り向き
「アンタ、随分サッパリしたねぇ」
と思わず口を付いてしまったものであった。以前は伸びた髪を上げて撫で付けていた(為に髪が膨れ上がったようになってしまい、生え際が異様に強調されていた)が、ふた月の間に髪を短く切り、額髪を僅かに垂らしている。
ふと店内を見回すと、流石にこの日は平日の前日、しかも時間も遅いこととてテーブルにぽつりと客が着いているのみであった。前回の連休中日の日曜日(そして時間ももう少し早い)とは雲泥の差である。

「で、何にします?」
「えーっと、これ、どんなの?」
と、目の前に置いてあった季節のカクテル「ストロベリーニ」のメニューを指差す。
「甘いです」
「あ、そ。でも、今日は(いい加減酔っているし)甘いの一寸位ならいけそうだし、いってみようかな?」
「甘いの、苦手でしたよね」
重ねて言う。
そこまで言うのであれば本当に甘いのであろう・・・・・・私が飲めぬくらいに。
「んじゃ、止めとく。それじゃねぇ・・・・・・」
とメニューをめくるが、何にしようかなかなか思いつかぬ。
「・・・・・・いいワ。何かテキトーに作って」
「テキトーに、すか・・・・・・」
またかよ、と言わんばかりの苦笑いを顔に貼り付けている。
尤も、全面的にこの注文が出来るのは、12年来の付き合いがある(うち7年程は月イチで通っていた)『SANBUCA』以外ではコイツだけなのだから、見逃して頂きたいものだ。『ジャックポット』の場合こんな注文は5〜6杯通して飲むうちで1杯だけの“遊び心”であるし、『ヴィノテーク』の場合は片や遊び過ぎ、片やバリエーションが少な過ぎるので味やベースの指定をした上での“お任せ”というパターンが多い。
それはともかく、Mさん、
「ブランデーベースでもいいですか?」
などと聞き、頷くと、目にも鮮やかなレモン色のロングのカクテルが出てきた。
「これは、何?」
「○□※△です」
「え?何だって??」
酔っ払いには聞き取れぬ。
思わず、椅子から立ち上がり、カウンターに身を乗り出す。
「○□※△です」
・・・・・・駄目だ。矢張り聞き取れぬ。が、幾度も言わせるのも気の毒である故、解ったような顔をして椅子に座り直す。

飲みながら始まったのは、またもや阿呆な話の数々。
先ずは、Mさんのネームプレートに目が留まったことから。
「やっぱりさ、Mってその字だよねぇ・・・・・・」
「何ですか?」
「いやね、ウチの職場にもMって悪ガキが居るのよ(お蔭でコイツの名が呼び難いこと夥しい。何か良い呼び方は無いものであろうか?)。いっつも怒鳴りつけてるもんだから、その字見ると奴のコト思い出してね」
「あぁ、Mって名前の奴、悪ガキが多いですからね」
「アンタも悪ガキだしな」
ニヤリと、笑いで答える。
「でさ、その名前の方は何て読むの?」
「当ててみてください」
「見当もつかんワ」
「▲▲(有名俳優)の∇って字に・・・・・・」
いつも思うのだが、人は何故自身の名前の字を説明するときに二枚目俳優や美人女優を引き合いに出すのであろう?
「うん・・・・・・やっぱり解らないなぁ・・・・・・」
「♯♯です」
初めて顔を合わせてから1年と5ヶ月、ようやくM氏のフルネームを知った。
「でも、久し振りに自分の名前をまじまじと見ましたよ。自分じゃ当たり前ですからね」
「そりゃそうだろうけど、一般的にはそうは読まんぞ。S君だってアレだけどさぁ・・・・・・」
このオトコも結構な難読名のひとりであるのでは?と思われる。そう言えば、コイツが生まれた位からボツボツ読み難い名前が出てきていたような気も・・・・・・今や読めぬ名前が付いた子どもなど珍しくもなんとも無いが。
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2007年12月23日

ペース配分・・・・・・(其の漆)

『ジャックポット』を出てAさんと連れ立って入った『パロット』であるが、この日はカウンターの入口近くの端にカップル客が一組居るのみ、カウンターの中に居たのもTさんただひとりでバイトのAちゃん(以前『カフェ・デ・ハーフェン』の頃に居たバイトのAちゃんとは無論別人である。嗚呼、それにしてもイニシャルで話をすると紛らわしいものよ・・・・・・)は休みであった。
前日は、Tさんは団体客(壮年の男性6人程)の相手をしており、カウンターに居た私の相手は専らAちゃんがしてくれた。その折に、私が関東の某県より来た、という話をしたのであるが
「え?じゃあ、ディズニーシーなんかも近いんですか?」
「乗り継ぎさえ良けりゃ部屋から1時間ちょい・・・・・・だね」
「えーっ!良いなぁ。私、ディズニーシー行ったこと無いんですよ」
「あ、そうなんだ。あちこちでそういう話は良く聞くけど・・・・・・」
「今度、ディズニーシーのお土産買ってきてくださいよ」
「う〜ん・・・・・・そうだね、今度は来月に来るからそのときにでもテキトーに見繕ってくるワ」
「ホントですか?!ありがとうございます!!」
・・・・・・ウケ狙いの気が強い我が性格を此れ程迄に厄介だと思ったことは無い。とは言え、あまりにも大きなぬいぐるみでも買うのでなければそんなに値の張る品は無い故、今日にでもちょいと出かけて本当に何か見繕ってくることにしようか?どうせ中に入らずとも入口付近の『ボン・ボヤージュ』辺りで結構な数の商品が売られていることであるし。
それはともかく、盛り上がっていたのはAちゃんひとりであり、Tさんは話にノることも無く平然とドリンクを調えたり設えた席で団体客の相手をしていたりしたものである。流石に店を任されているオトナは年若くとも違うものよ、と感心していたものであるが・・・・・・閑話休題。

この日、元々私は此処に長居をする気は無かった。ドリンクを2杯程ちょいちょいと呷り(ドリンクの種類が豊富な直営のバー2店舗とは違い、此処のメニューの中で私が飲めるのは「カンパリソーダ」のみである)景気付けに何か1〜2曲歌ってさっさと退散し、前日訪れることが適わなかった『グラン・キャフェ』で今後の身の振り方などに思いを馳せながらひとり静かにグラスを傾けるつもりであった。
・・・・・・が、連れが居る。自分のペースのみで行動することは適わぬ(故に、私は団体行動が苦手なのである。特に酒が入る場では我儘が募る私である故、気を使わねばならぬ場は不得手なのである)。
取り敢えず、カウンターの海側(先客とは反対側)の端に席を占める。
「あら、Aさん、今日はアバンチュールですか?」(Tさん)
「どうかな?」(Aさん)
「良いですねぇ」(Tさん)
「いやね、隣の『ジャックポット』でよくお会いするんですよ。んで、今日ここに来るって話をしたら、まぁ、一緒に来ようか、ってことになって」
元より長居をする気は無い私、話が長引くと(引っ張られると)面倒なのでとっととネタばらしをし、「カンパリソーダ」を注文する。Aさんの注文は、ここにもキープしてある焼酎である。

先ずは、乾杯。
その後、その日の行程や近況などの四方山話をする。
その間、先客の男性はTさん相手にずっと話をしている。狭い店なので、必然的にこちらにもその内容が耳に入る。どうやら、海外のあちこちを訪れ、滞在などもしておられる方らしい。矢張り海外が好きであちこちへ行っているAさん、じっと耳を傾けている。故に、我々の話もそちら関係の話へと流れていく。
先客の話は、食事の話になった由。その中で
「ヨーロッパなんかには“コメ”が無いですからね」
というひと言があった。Aさん、こちらで大きく頷く。が、言いたいことは解るが“文字通り”としてしまうには少々(商売柄)引っ掛かるものがある。
「一寸今のはなぁ・・・・・・ポルトガルなんかにも炊き込みご飯風の料理がありましたよね」
放っておけばよいモノを、酔っ払いの身故、ついつい口を挟んでしまう。
「それはそうだけど・・・・・・うーん、一寸違うんだなぁ」
とうとう我慢出来なくなったのであろう。Aさん、先客の方へとついっと寄って行く。
「横から失礼。今の話は・・・・・・」
先客の女性を挟み、男性2人で話が始まる。と同時に盛り上がりを見せる・・・・・・やれやれ。

「何か歌います?」
と、Tさんが曲目の分厚いリストを持って来る。幾ら何でも「カンパリソーダ」のみで帰る訳にもいかぬであろう。が、アップテンポの賑やかな曲は話を中断させる恐れがある。このまま放っておいて貰ってさっさと移動しようと思っているので、話を中断させることは、避けたい。
「じゃ、これを」
とリクエストしたのは、中島みゆき女史の「寒水魚」というアルバムに収録されている「歌姫」。これは淡々としたタイプの歌である。BGMにも紛うばかりのスローテンポの歌である故、話の邪魔にはならぬであろう。

淋しいなんて口に出したら
誰もみんなうとましくて逃げ出してゆく
淋しくなんか無いと笑えば
淋しい荷物肩の上でなお重くなる・・・・・・

(中島みゆき「歌姫」より)

思えば、この頃去来していた(今でも無いとは言わぬが)思いが歌詞になっていた歌であっただろうか。声を張り上げず、半ば呟くように歌う。カウンターの向こう端は気付かずに話に熱中しているようである。
そこへ、『K』の女性と“素顔のサンタ”が店内に入ってきた。ふたり、入ってくるなりニッコリと笑い、私の隣りの席に着く。歌は未だ終わっていない。
ようやく歌が終わった。Tさんと隣りから拍手を貰う。そこで、話に熱中していた男性2人、歌っていたのに気付いた様子。
「失礼。BGMかと思いましたよ」
「いえ、こちらもそのつもりでしたので」

こちらの話は、この“サンタ”をネタにした川柳の話になる。そう言えば、『ジャックポット』でもこの話は出ていたような・・・・・・。
請うて、その川柳を見せて貰う。内容は著作権に触れるであろうし、出処は一寸した理由があるのでここで公表するのは差し控えるが、確かに、これには納得してしまったものであった。
「成る程・・・・・・上手いこと言いますねぇ」
“サンタ”(私がこの人物を“サンタ”と表記するのはその川柳によるものである)は、その間に洋楽の歌本を見ている。が、なかなかお目当ての歌が見つからぬ様子。
Tさんより操作する機械を受け取り、『K』の女性が“サンタ”の歌いたい歌を検索する。程無くして、歌が見つかった様子。曲が始まる。私は耳にしたことは無いが、楽しげな、どこぞの民謡風の可愛らしい曲調の歌である。
“サンタ”が歌い始める、
すると、話を中断したAさんがそれに併せて歌い出す。
しかし、これはこの“サンタ”にはお気に召さぬ様子。どうやらひとりでゴキゲンに歌いたかったらしい。急に機嫌が悪くなり、演奏を止める。そして、再び同じ曲をリクエストし、歌い始める。
味を占め、“サンタ”をからかうモードに入ったかの如くのAさん、今度は始めから歌を併せる。ふくれっ面で“サンタ”が再び歌を止め
「違う!お前は歌うなよ!!」
とばかりにAさんを見る。Aさん、苦笑してようやくからかうのを止める。
三度、同じ曲がかかる。今度ばかりはご機嫌を損ねる訳にもいかぬであろう。隣りと目の前で女3人(うちひとりは私である)、手拍子でその場を盛り上げる。無論、歌い終わった“サンタ”には満場の拍手。満足げにマイクを置く“サンタ”。
(手の掛かるオヤジだ・・・・・・あせあせ(飛び散る汗)

次にAさんが矢張り洋楽の歌をリクエストして歌い始める。そろそろ座を移すか・・・・・・と思った矢先、すっとTさんが席を外してしまった。これでは、店を出る訳にはいかぬ。
「そう言えば、『ジャックポット』に○○さんのチップ、山積みになってましたよ」
「え?あれ、私のチップだったんですか?」
『ジャックポット』のブラックジャック台に乗っていた主の居ないチップは私のものであったのだそうな。・・・・・・そう言えばSa君には「中断する」と言っていたのだった、と思い出した。
お隣と話をしつつじりじりしながら待ち、ようやく店内に戻って来たTさんにチェックを頼み、勘定を支払う。この間に歌はまたもや“サンタ”に戻る。
「あら?もう行っちゃうんですか?」
「今回未だ『グラン・キャフェ』に顔出してませんからねぇ。やっぱり一寸は顔を出しておかないと、ね」
「そうですか。じゃ、また」
「はい、それじゃ」
店内の客に暇乞いをして歩く。歌っている“サンタ”なぞ、歌いながら手をすっと差し出す始末。グローブの如き大きな手と握手をし、その場を離れる。

Tさんは、店外迄送ってくれた。
「じゃ、また来月来ますから」
「お待ちしてます」
「それじゃ」
「・・・・・・ディズニーシーのお土産、宜しくお願いします」
成る程。
何も言わなんだが、貴女も欲しかったのね。
では、土産はふたつだな。
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2007年12月20日

ペース配分・・・・・・(其の陸)

戻って来た『ジャックポット』。
客は入っていないとは言わぬが、前日の【満員御礼】の如くの賑わいとは無縁の客の入りである。それはそうであろう。何せこの日は日曜日、国内よりの宿泊客は殆んど帰ってしまう日であるのだから。
(私の場合、翌日が休みになったこともあってこの日まで宿泊致したのであるが)

席に着き、何かドリンクを頼んだように思う。・・・・・・というのは、この日のレシートをとうとう貰わずじまいであったので(其の詳細は後程)この日此処で何を頼んだのかが記憶の彼方に飛んでしまっているのである。

このとき、盛り上がりを見せていたのは“素顔のサンタ”が異様にアツくなっていたブラックジャック台である。実はこのサンタ、私とは昨年来の知り合いである訳で、現に前日も・・・・・・
「去年此処で会わなかった?髪型が変わってたから気付かなかったよ」
「へ?何??」
「いや、髪形がさ」
「・・・・・・私のこと覚えててくれたの?」
「勿論」
「いや、会えて嬉しいですよ」
「俺もだよ」
・・・・・・などという会話を(一部日本語交じりであるが、まぁ、下手な英語で)交わしていたのである。みなさんもクリスマスのこの時期、『ジャックポット』へちょいと遅めの時間に訪れると“素顔のサンタ”に会えるやも知れぬ故、是非こちらを覗いてみることをお勧めする。愛想の良いサンタであるから
「HO,HO,HO,Merry Christmas!」
と返事をし、一緒に写真に納まるくらいはしてくれるであろう。・・・・・・最早私には望めぬことであるが。

それはともかく。

サンタは、どうも負けが込んでいたようである。ちなみに、この折のディーラーはS君であった。S君、サンタを見ながら苦笑交じりでカードを捌いていたものである。
それを横目で見ながら、飲み物を呷る。
「○○さん、何だかんだ言ってここを拠点に動いてくれてますよね」
と、カウンターで待機中のSa君。
「だって、I君勘定払わせてくれないんだもん」
「それが狙いです」
にやりと笑って言うのはI君こと店長Taさんである。

今の今まで見てきた『ムーンシャワー』のライヴの話を肴に酒を飲む。こういう話は、幾ら同じ『アムステルフェーン』内にしょっちゅう居るとは言え、仕事をしている為ライヴなど見に行く訳にはいかぬ『ジャックポット』のスタッフ達には新鮮に思えるらしい。舌足らずの私の話ではあるが、興味深そうに聞いている。
隣りでは、“素顔のサンタ”と『パサージュ』内のショップ『K』のおふたりがブラックジャックに興じている。見ると、空席に見える端の席にはチップが山積みになっている。もしかしたら此処にも客が居るのでは?と、今回はブラックジャックに加わるのは遠慮をする。

グラスが空いたところでサンタの傍に寄ってみた。今回は、何とか勝ってチップを手にした様子。
「どう?調子は」
「このディーラー、イジワルね」
・・・・・・不貞腐れたサンタなど、滅多にお目にかかれるものでは無い。
ここでふと、店内の時計を見た。
あっという間に時は過ぎ、既に22:30に程近い時刻。
「あ・・・・・・そう言えば、昨日『パロット』に「今日も行くね」って言っちゃったんだっけ。行かなきゃ」
すると、ゲームを中断していた『K』のAさんが
「あ、じゃあ俺も行こうかな」
と仰る。
連れが付くのか、ちとこれは・・・・・・?などと失敬なことを考えたものの、もう時間が無い。
「じゃ、本当に行ってくるワ」
「本当に行くんですか?」
「・・・・・・言っちゃった以上はね・・・・・・」
再びコートを置かせて貰い、またもや勘定を払わずにAさんと連れ立って『パロット』へと向かう。
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2007年12月17日

ペース配分・・・・・・(其の伍)

『ムーンシャワー』の入口でルームキーを提示し、料金を支払って会場に入ると、そこには既に席に着いている人影が見えた。何とはなしに、見覚えがあるような気がする。近付いてみると
「遅かったじゃない」
「もう来ないかと思ってた」
と口々に・・・・・・。そう、そこに居たのはGさん、Kuさん、Oさんという顔見知りの面々であったのである。
私とて、花火の途中でここ『ムーンシャワー』に来たのであるが、それよりも先に席に着いていたということは、この方々も花火はすっぽかしてきたのであろう。

テーブルに近付くと、Kuさんは既に愛用のカメラを三脚にセットしておられ、Gさんも新しい相棒をテーブルに置いておられた。私も自分のデジカメをテーブルに出す。
「ここ、カメラ密度が高いわよね」
と、Gさんがぽつり。

そのまま、我々4人であれやこれやと取り留めの無い話をする。私も、徒然なるままに『ジャックポット』でのあれやこれやの話をする。前日のTさんのこと、その日にお会いした◆◆さんの話など・・・・・・。
話の合間にサービスドリンクのウーロン茶を貰い、それで喉を潤しながらまたまた話に興じる。何のかのと言って、ハウステンボス好きの旧知の面々であるのでこもごもの話は尽きぬ。
そうこうしているうちに、照明が落ちた。

「ゴスペルライブ in ムーンシャワー」第一部「ゴスペルライブ」第一部の開幕である。
ステージ裏からバンドの面々が出てきてチューニングをすると、シンガーは客席の通路から歩いてステージへと向かう。昨年はダンスホール全体がステージとなって使用されていたが、今年はダンスホール内にも幾つかテーブルが置かれ、奥側がステージとなっていた。

とりどりの華やかな衣装に身を包み、シンガー達が歌う。
この日は、ひとりが休みだったそうであるが、それでも、至近距離で見て、聴く、ハーレムメッセンジャーの歌は圧巻そのものである。
ニューヨークから来ている彼らの歌は、当然のこと英語で歌われる。言葉など聞き取れはしないのに、それでも歌の洪水に飲み込まれ、歌の世界に引き込まれていくのは何故なのだろう?全身に、ビリビリと刺激が走る。胸を打たれ、時に心が沸き立ち、時にしんみりとしながら思わず涙が出そうになる自分が居る。
ハーレムメッセンジャーは、CDも所持はしているが、矢張りライヴで聴くのが一番であろうな。・・・・・・そう、ケリーさんの「Silent Night」を聴きながら思ったものである。

休憩時間に、Oさんとふたり、慌てて『ジャックポット』に走る。実は、『ジャックポット』に誰かと会ったら差し上げようと思った「関東限定キティちゃん」の数々を置いていたのである。
「Sa君、そっちに置いてあったキティちゃん、出してくれる?」
「キティちゃん?何処にあるんですか?」
「あのね、I君が皿に纏めて入れてた。そう、後ろの引き出しのどっかにある」
Sa君、目を白黒させながら引き出しを開け、
「あ、これですね」
と、キティちゃんをドサッと出す。時間も無いこととて急いであれこれと見て、結局Oさんが取ったのは本を読んでいる「神田ヴァージョン」のキティちゃんであった。
大慌てで走って『ムーンシャワー』に戻り、席に着くと、ほんの二呼吸程をおいて再び照明が落ちる。

「ゴスペルライブ in ムーンシャワー」第二部第二部は、第一部とは打って変わってアップテンポの曲で始まった。シンガー達の歌も、第一部のしっとりとした雰囲気とは違い、ノリの良い心浮き立つものである。
確かにメモリーも心細くなってきてはいたのであるが、私の写真が極端に少なくなっていたのはそればかりが原因では無かろう。手拍子を打ち鳴らし、リズムに身を委ね、1曲毎に拍手を送る。顔触れは全く異なるが『夏 長崎から』の心地良い音楽に浸ったあの時間を思い起こさせるようである。
終盤、お馴染みのエッセルさんの「Survivor」が始まった。この歌も、また、ここ『ムーンシャワー』でお馴染みの歌である。相も変わらずパンチの聴いた歌声が心を鷲掴み、魂が揺さ振られるが如き心地がする。間奏の折、隣りの席のOさんに
「エッセルの「Survivor」じゃなきゃ物足りないんだよね」
と言うと
「同じです」
と、何とも頼もしい答えが返って来た。

時間は、あっという間に過ぎて行く。
未だ未だ聴き足りないが、ライヴは終わり、シンガー達も、バンドの面々も、ステージから退場してしまった。
我々も、席を立つ。
Kuさんは片付けやらの諸々の用事がある為にしばし『ムーンシャワー』から出るのが遅くなる由。Gさん、Oさんと共に出口へと向かった。
夢心地のまま階段を下り、そのまま家路に着くお2人に別れを告げる。そして、その足で向かったのは、またもや『ジャックポット』である。

そう言えば・・・・・・
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2007年12月16日

ペース配分・・・・・・(其の肆)

話の合間にちょいと席を立ち、戻ると、Sa君はブラックジャック台のディーラー席に座り、カードを捌いているところであった。Taさんはカウンターに立っている。客もそれほど多くは無い・・・・・・が。
そろそろ団体の客も入り始めている。雰囲気も、何とは無しに客が入ってきそうな様相である。
ここで、Taさん、携帯を取り出し、何処かに電話を掛けるが、どうも繋がらない様子。
「アレキサンダーの屋台とは連絡が取り様が無いもんですからね・・・・・・」
「そうね」
「だから、Sにも携帯を持たせてるんですよ」
「あ、成る程」
「だけどどうも上手く繋がりませんね。あっちから掛かってきたときにはこっちがメイキング中だったり、こっちが掛けたときにはあっちが接客中だったり」
「お互い相手は見えないしねぇ・・・・・・そう言えば、あっちの屋台でコーヒー買ったときにS君と一寸話をしたんだけどね」
「はい」
「あのコ、今日15:00出勤で起きたの14:30だったんだって?」
「・・・・・・一寸遅刻気味でした」
「あ、そう・・・・・・」

「ところで、次、何にします?」
「そうね、何にしようかな・・・・・・?」
前日よりあれこれと飲んでいる。お任せを作って貰うにしてはそろそろ人手も足りないであろう。考えあぐねていると
「じゃ、久し振りにカードなんかどうですか?」
と勧められる。
「そうだね。じゃ、ちょっと“休憩”して」
と、ブラックジャック台に席を移す。以前チケットを貰っていたチップは、既に前日のうちから店に管理されている。そのとき渡したチケットは(Tさん曰く“顔担当”の)バイトのH君が書いたものであったのだが・・・・・・
「お前、字、汚いなぁ。ペン字でも練習しなさいよ」
と、思わず口にしたばかり。当人もこれを聞いて頭を掻いていたものであった。
何分このH君、確かに“ジャニーズ系イケメン”と言えなくも無い風貌であるが、何せ19歳の若さであるのですることなすこと未だ未だ手応えが無いこと夥しい。そこで、女性客が入ってくる度に
「ほれ、イケメン。さっさと注文とっといで」
などとからかって遊んでいるのである・・・・・・閑話休題。

飲み物は後回しにして、先ずはSa君のカード捌きを見る。既に『ジャックポット』に入って4ヶ月程、なかなか堂に入ったカード捌きである。
「初めてTさんの手捌きを見たときはビックリしましたよ。あんまり早くて、鮮やかで」
「そうだろうね。あのヒト慣れてるから」
「で、それを言ったらですね」
「うん」
「本人、「アタシはそんじょそこらのディーラーより上手い!」って自分で言ってましたよ」
「それを言っちゃうところがあのヒトなんだよね・・・・・・」
最早慣れてしまっている。今更どうこう言うことも無い。それに、私はそのキャラクターを面白がるが故にTさんの居る『ジャックポット』に来るのである。
それはともかく、Sa君、カードを纏めて、私の前にカードを切るプレートを差し出す。受け取り、適当なところに差し込む。そこでカードをホルダーにセットしようとすると、突如

ガコン!

という音がした。見ると、カードホルダーの一部が外れてしまっている。
「あれ?カードホルダーが“バースト”しちゃいましたよ」
「おいおい、大丈夫かい?」
「・・・・・・あ、付きました」
何とか填め込んだ様子。
「それ、木製だから瞬間接着剤(実際に言葉にしたのは商品名であるが)じゃ付かないよねぇ」
「そうですね。普通に木工用ボンドなんかを使わなきゃいけないでしょうね」

どうにか、ゲームを始める。
カードをしている客は、私ひとりである。
ここで、珍しくも不思議なことがあった。
このときの私の出目は、21にしなければならぬカードが14だの15だのと半端な数ばかりが来た。この先また頻繁に来ることが出来る状態になるか判らぬし、そうなるとここにも暇乞いをせねばならぬし、少しチップを減らしておこうと考えてヒット(もう1枚カードを貰うこと)を繰り返した。が、その後のカードは3だの4だの5だの・・・・・・つまりなかなかバースト(カードの合計数が22以上の数になること。その場で“負け”が決定する)しないのである。Sa君も
「普通はバーストする手ですよね」
と、少々呆れた様子。カードが半分を過ぎた頃、ようやくバーストの手が来て
「おお、初バーストだ!」
「今までバーストしないのが不思議なくらいですけど・・・・・・」
カードホルダーもその後は“バースト”せず、どうにかこうにかゲームが終わる。
「じゃ、次行きましょうか」
「うーん、一寸こっちも休憩しようかな。下ばっかり向いてたら首痛くなってきたよ」
「それじゃ僕、一寸このカードホルダー直してきますね」
「うん」
「でも○○さん、▼(H君)だったら上向いてるから首痛くならないんじゃないですか?」
「そうでも無いよ。アイツ、結構ビミョーな手ばっかり出すもん」

この頃、アレキサンダー広場の屋台に“出稼ぎ”に行っていたS君が店内に戻って来た。
「お帰り。寒かったやろ」
「寒かったっす・・・・・・」
心底寒そうに首を竦めるS君。
「だけどさぁ、■■から来るとどうも九州の寒さはあんまり寒く無いような気がするんだよね」
「そうですか?」
「うん、昨日Tさんとも話したんだけどね、向こうみたく骨に染みるような寒さは無いもん」
「そんなもんですかねぇ」
「そうよ」

「ところで今日のゴスペルですけど、大したメンバーが休みでなくて良かったですね。」
「そうね」
「見てると、あの痩せた女性ふたりが居ると居ないじゃステージの盛り上がり方が違いますよね」
前日『ジャックポット』に来たときに、このS君、わざわざ『ムーンシャワー』迄出向いてキャストの確認をしてくれたのである。そのときは私も到着したばかりであったし、午前中は仕事で疲れてもいたので折角の好意ながら『ジャックポット』に根を生やしていた(が、途中一寸だけ『パロット』で歌ってきた)のであるが・・・・・・。
「で、やっぱり『ムーンシャワー』ですけど、花火の後すぐ開場ですから早めに行かないといっぱいになるらしいですよ」
「そうなんだ。じゃ、取り敢えず1杯」
「畏まりました」
Taさんにカクテルを作って貰う。出て来るか来ないかというタイミングで、花火が始まる。他の方であれば店外に出て釘付けになろうかという花火ショー「HANABI Around the World」であるが、イベントに然程興味を示さぬ私は殆んど見ることもせぬ。それを知っているスタッフ達も今や平然としている。ましてやS君などは
「○○さん、花火終わると人いっぱいになりますよ。早く行かないと」
と勧める始末。こちらもそれは解っているので
「そうだよね。じゃ・・・・・・」
と、カクテルを急いで飲み干して席を立つ。
「じゃ、今度はコート置いとかしてね」
「はい、お預かりします」
連発のスターマインが始まった頃、『ジャックポット』を出て『ムーンシャワー』に向かう。
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ペース配分・・・・・・(其の参)

「何も笑わなくてもいいじゃないのよ」
と言いつつ入って来たその人は、『カフェ・デ・ハーフェン』時代よりの常連(?)のひとりである◆◆さんであった。この方とは『ヴィノテーク』で初めてお目にかかってよりもう2年半が経つ。初めのうちこそ緊張して何を話していたか解らずにいたものの、すっかり慣れ親しんだ今となっては特に臆することも有りはしない。
「いやいや、すみません」
未だ未だ残る笑いを噛み殺しながら答える私。
「今日は泊まり?」
「はい、昨日と今日の2泊で」
「そう。で、ホテルは『アムス』?」
「いえ、『デンハーグ』です」
「そうか、あなたは『デンハーグ』だったっけね」
「はい」

ここで、Taさんが注文を聞く。
「で、今日は何に致しますか?」
「今日はね、ビール1杯で帰るから」
「何も宣言しなくても・・・・・・あせあせ(飛び散る汗)
と、これはSa君。
「いやぁ、今日はね、「シャンパンとワインに親しむ会」があったんだよ」
と、メニューをカウンターの上に出す。が、メニューが閉じたままであった上、私とは2席ばかりを隔てていたので手を伸ばしてメニューを開く訳にもいかぬ。
「それで、一寸飲み過ぎてね・・・・・・少し休まないと帰るにも帰れないものだからね」
「それで“ビール1杯”ですか」
「そうそう」

「ところで、最近はお忙しいんですか?」
と、聞いてみる。
「いや、私は忙しくないですよ」
「そんなことはないでしょう」
先日も、仕事の電話が飲んでいる真っ最中に掛かって来ていたではないか。・・・・・・とはおくびにも出さず、軽いやり取りを交わす。
「そう言えばね、モーレンも一寸システムが・・・・・・」
我々にとって嬉しい方向に変わるらしい。聞きかじりなので定かでは無いし、最早詳細など覚えてもおらぬが。
それでは、ハウステンボスのスタッフ達は今頃てんてこ舞いをしているであろうな。

非売品メモ帳「そうそう、これ、持ってる?」
「いや、見たこと無いですけど・・・・・・」
「じゃ、あげるよ」
と、ポケットから出したのがこれである。
「これはね、非売品なんですよ。15周年の記念品でね」
「あ、だから(模様が)15あるんですね」
「そうそう」
「いや、これは嬉しいなぁ。ありがとうございます」
我知らず、顔が綻ぶ。
カウンターの上に置かれたそれをさっと取り上げ、しげしげと眺める。
よくよく見るとお判りかと思うが、これは、ハウステンボス15周年記念ロゴの一部である。それぞれの模様をそれぞれの色で塗りつぶし、「15th」の文字を書き加えればこれが15周年記念ロゴであることがひと目でお判りになるであろう。
私のはしゃぎようを見て、◆◆さんもニコニコしておられる。
そして、ふとポケットを探ると
「あ、もうひとつあった。これもあげるよ」
と、もうひとつを私の席の方へ置く。尤も、先にも申し上げたとおり私と◆◆さんの席は離れているので、カウンターにポンと投げるような恰好になる。それを見たSa君、
「何も投げなくても・・・・・・」
と言う。
「そういう訳じゃないでしょ、この場合」
と、Sa君に言ってから
「本当に、これは嬉しいですよ。ありがとうございます」
◆◆さんにお礼を申し上げる。
「何かのメモにでも使ってくださいよ」
いえいえ、これをメモに使うなど勿体無い!大事に取って置かせて頂きますとも。

ここで、◆◆さんのグラスが空になった。
「じゃ、帰るよ」
「本当にお帰りなんですか?」
「うん」
「それでは・・・・・・」
会計を済ませると
「じゃ、また」
と言って席を立ち『ジャックポット』を出る。心なしか後姿が疲れているようだが大丈夫なのであろうか?他人事ながら、体調にだけは留意して頂きたいものである。

その後、Sa君としばし話をする。
◆◆さんは、それなりの役職についている方であるので
「初めてお会いしたときは緊張してね・・・・・・」
「僕もですよ。普通に話してるのTさんぐらいでしたけど・・・・・・」
気さくな人柄なので、Sa君もそれほど経たぬ内に緊張が解れ、軽い会話を交わすことが出来るようになったのだそうな。それは私も同様であるので、それについてはふたりの見解は一致する。
「でもね、初めて会ったときはね、Tさんとも初めて会ったときだったんだけどね」
「はい」
「◆◆さんが椅子を引いて「こちら空いてますよ」って勧めてくれたんだけどさ」
「はい」
「そのときTさん、◆◆さんのこと“ナンパおやじ”呼ばわりしてたんだよねぇ・・・・・・たらーっ(汗)
「ま、Tさんなら解らなくも無いですけどね・・・・・・」
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2007年12月14日

ペース配分・・・・・・(其の弐)

戻ってみると、『ジャックポット』には2組位の客がテーブル席に座っていた。どちらも既にテーブルの上には何某かの飲食物が出ており、TaさんとSa君は何れも待機状態であった。
「只今」
「あ、お帰りなさい」
と、元の席に腰を下ろす。

「じゃ、何になさいますか?」
と、再びメニューが運ばれてくる。
「そうね・・・・・・この(と“オリジナルカクテル”の項を指差し)「デリーフデ」と「ハーフェン」ってどんなの?」
「それは、飲んでみてのお楽しみです」
と、Taさん。
「あ、そ。じゃ、それ貰ってみようかな。それと、何か食べるものは、と・・・・・・「ソーセージとパンチェッタ」ね」
「畏まりました」
Taさん、Sa君に何か言い付け、それを受けてSa君は奥へと引っ込む。Taさん自身は飲み物の準備である。リキュールのボトルを幾本も奥の棚から持ち出し、カウンターに並べる。

オリジナルカクテル「デリーフデ」先ず出て来たのはオリジナルカクテル「デリーフデ」である。
これは、以前にお任せで作って貰ったカクテル同様にブルーベリーのリキュールが使われている。が、味の方は使われている材料の為かサッパリとしながらも甘みがしっかりと出ており、以前「Tenderly」と呼んだ記憶の中のカクテルの方が矢張り私の好みには合おうか?
・・・・・・とは申しながらも、これもまたブルーベリーの香りが強く出ており、ブルーキュラソーの青色が清涼感を演出し、爽やかな甘みですいすいっと飲めてしまうカクテルである。飲みやすいものを、と注文される方には打って付けのカクテルであろう。

「ソーセージとパンチェッタの盛り合わせ」続いて、奥からSa君が皿を持って出てきた。
「ソーセージとパンチェッタの盛り合わせ」である。
目の前に、皿が置かれる。そこで、近くのおしぼりやら灰皿やらを横にずらし、カメラを構える。
「そうやって写真を撮るって判ってたら、ソーセージもう2本位サービスしたんですけどね」
「それは止めた方が良いと思うよ・・・・・・」
何せ用途はこのようにブログ用である。誰の目に触れるか判らないのであるから“スタンダード”が無難であろう。
ソーセージは、相も変わらず美味い。出来たての熱々であるから、噛み締めると熱い肉汁がジュッと口中に溢れる。マスタードもたっぷりと付けても香りは立つものの肉汁の味の所為かそれ程に辛味は感じぬ。香ばしく炙られたパンチェッタも効いた塩気がカクテルの甘みを相殺し、パンチェッタの香ばしさとカクテルの香りが共に引き立つ。添えられたオニオンマリネの酸味が舌に残る肉の脂をスッキリと取り去り、また新たに肉の旨味を味わうことが出来る。

オリジナルカクテル「ハーフェン」「ソーセージとパンチェッタの盛り合わせ」を食している間に、グラスの中は空になっていた。頃合いを見計らい、出てきたのがこのもうひとつのオリジナルカクテル「ハーフェン」である。

これが出てくる前に、Taさんに
「次、本当に行きます?」
と確認をされていた。訝しく思いながらも頷いた。
飲んでみて、“確認”の意味を理解した。
甘い。
これは、味はパイナップルジュースそのものである。が、これはこれでトロピカルなテイストは出ているので、クラッシュアイスを詰めたバルーングラスにでも入れてストローを添えて出せば何時ぞやの「トロピカル選手権」にでも出品出来るものになるのではないかと思われたものである。

これを写真に撮るとき、Taさんが未だ目の前に居た。
顔を写さぬよう、角度を調節してシャッターを押した。が、何せ然程離れてはおらぬ場所に居る。必然的に、フラッシュを浴びる。
ここでTaさん、パッと両手で顔を覆う。
「大丈夫だよ。顔は写さないようにしたから」
「うわっ!眩しい。目がやられた」
「・・・・・・あせあせ(飛び散る汗)
流石にこれにノれる程迄酔いは回っておらなんだので・・・・・・・。

飲みながら食いながら、片付けを始めたSa君と他愛も無い話をする。何でもSa君、ヨットのサークルに所属をしていたのだそうな。
「僕、マジで“あ、もう駄目かな”って思ったことがあるんですよ」
「どうしたの?台風にでも遭った??」
「いや、逆です。風が全く無くなってですね・・・・・・」
そのまま数時間、動くに動けず海上に居たのだそうな。
「いや、もう戻ってから水飲みまくりですよ」
「そらそーだろーね」
・・・・・・という話が出たのも、このSa君の所属したヨットのサークルに、新規にリニューアルオープンした『パロット』のTさん(無論のことここ『ジャックポット』のTさんとは別人である。・・・・・・それにしても、このハウステンボスにはイニシャルにすると同名の人物が多くなるものである。無論きちんと氏名を書けば全くの別人であるのだが)もまた所属をしていたと聞いたことからである。こちらのTさんは、ヨットの腕前はなかなかのものであるそうであるので、機会があれば聞いてみるのも面白かろう。

ふと入口を見ると、人影が近付いてくるのが見えた。
「お客さん・・・・・・」
と言いかけたとき、どなたが入ってきたかがハッキリと判った。
知らず知らずのうちに、私は笑い出してしまった。
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2007年12月13日

ペース配分・・・・・・(其の壱)

真逆作ることはあるまいと思っていたカテゴリ「Amstelveen Story」である。

・・・・・・というのも、私の場合『ホテルデンハーグ』の『ヴィノテーク』に加え、『ジャックポット』(旧『カフェ・デ・ハーフェン』)や『グラン・キャフェ』にもそれぞれ馴染みのスタッフが居り、挨拶がてら顔を出しているとそれだけで夜の時間が無くなってしまうので、他に行くことなどあるまいと思っていたのだ。
が、ふとした弾みで『パロット』へ顔を出して馴染み(?)が出来てしまった。また、イベントの折など『ムーンシャワー』にも行くとなると、ナイトスポットである『アムステルフェーン』を回るだけでいっぱいいっぱいである。
少々心情的な関係で『ヴィノテーク』には当分足を向けることも出来まいなぁ・・・・・・と思っていた矢先であるので、この状況は嬉しい反面少々気忙しい。現に、今回もちとペース配分を狂わせてしまった為に然るスタッフをやきもきさせてしまったのであるから。

それでは、その“やきもきさせた”夜の話をしてみよう。

『パレスハウステンボス』後庭ライトアップ今迄は飲んだくれていた為に見ることすらなかった『パレスハウステンボス』の夜景を撮影し、そのまま借りていた自転車を“終日”から“オーバーナイト”へとスライドさせ、『アムステルフェーン』に着いたのは18:00を少し回ったところ。取り敢えず、と向かったのは、ご存知『ジャックポット』である。この後18:30よりアレキサンダー広場にて「ゴスペルライブ」が開催されるので、その前に少々アルコールなど引っかけて体を暖めようと思ったのだ。

ふとテラス席を見ると、新人バイトのSa君が椅子を並べ替えている。
(はて、寒いのにテラス席まで用意するのかしらん?)
と、訝しく思いながらも店内へと歩を進める。
ひとりカウンターに立ち、
「いらっしゃいませ」
と私を迎えるのは、店長のTaさん。
「今日は女王様は休みです」
「うん、昨日聞いた」
既に半年ばかりの付き合いになり、最早双方共に遠慮の欠片も無いやり取りが始まる。ちなみに“女王様”というのは、お察しの方もあろうがこれまたご存知の“T姐さん”のことである。
(この日は店長Taさん(最近はI君と呼ぶことのほうが多いが)にバイトのS君とSa君が出勤で、“女王様”ことTさんとバイトのH君が休みであった。そして、このときS君はアレキサンダー広場の屋台に居たので、必然的にTaさんとSa君が店内を切り盛りしていたのである)
「日曜日に休みたくない!ってずっと言ってたんですけどね」
「しょーがないよ。アレも一応主婦だもん」
そこへ、先程外の椅子を整理していたSa君が帰ってくる。
「あ、いらっしゃいませ」
「この寒いのにテラス席オープンすんの?」
「いえいえ、椅子がバラバラになってたんで並べ直してただけですよ」
「テラス席には期待していません」
と、Taさんも口を挟む。
それはそうであろうな。真冬の最中に。
「それにしても、今日はヒマでしょうね」
「そりゃそうだろうね。日曜日だし、明日は平日だからフツーは仕事あるし」

「ところで、今日は何にします?」
「うん、これからゴスペル見に行くんで、何か軽いものを」
「お食事は済まされたんですか?」
「ううん、食べてないから、後で来たときに何か貰おうかな」
「畏まりました」
Taさん、取り敢えずのカクテルを作り、出す。手が空いたと思しきSa君が傍らに立ったので、話しかける。
「そう言えばさ、Sa君は何か作らないの?」
「僕は作らないですね」
「何か作ればいいのに」
「いやぁ・・・・・・」
と、頭を掻くSa君。・・・・・・まぁ、8月に入ったばかりであるから、メニューのカクテルを覚えていくのもまだまだこれからであろう。取り敢えず、ビルドのカクテルに手を付け始めたばかりのようであるし。
「○○さん、この「ジャングルファンタジー」っての飲みました?」
「飲んで無いけど、これ、何?」
「バナナ(リキュール)とパイン(ジュース)です」
「げ!」
「・・・・・・って思うでしょ?ところが、これが意外と合うんですよ。滅茶苦茶甘いですけど」
「・・・・・・アタシじゃ悶絶しそうだな・・・・・・」
「で、僕、お客さんによく“お勧めは?”って聞かれるんですけど、あれ、難しいですよね」
「そうだろうね、好みもあるし」
「だから、そういうときは僕の好きなのを勧めちゃうんですけど・・・・・・」
「ま、良いんじゃない?それが一番無難だワ」
「ですよね」
このSa君、意外と言うか当然と言うか、割合に探究心が強いようである。聞けば、メニューに載っているカクテルも7〜8割方は味見をしたのだそうな。
「味が解らないとお客さんに聞かれたとき答えられないじゃないですか」
「ま、そうだね」
「だから、合間合間に味を見て覚えるようにしてるんですよ」
頼もしいバイトが入ったものである。同じバイトといってもH君には未だこの役割をさせる訳にはいかぬ(何せ奴は未だ未成年である)ので、Sa君には頑張って欲しいものだ。何せS君が今年いっぱいで(一応)辞めることになるのであるし。とは言っても、繁忙期には呼び戻されることになっているそうであるので、S君ともこれきり会えぬことになるとはどうも思えぬのであるが。

流石に短い時間である。慌しく、あっという間に「ゴスペルライブ」に行かねばならぬ時刻になってしまった。
「じゃ、一寸行ってくるね」
「はい、行ってらっしゃい」
「ところでさ、バッグ重いから置いてっていい?」
「いいですよ。貴重品はありますか?」
「うん、財布入ってる」
「判りました。気を付けて見てます」
「んじゃよろしく〜」
と、コートを引っ掛け、そのままアレキサンダー広場に向かう。
圧巻の「ゴスペルライブ」を堪能した後、同席したOさんとKuさんとの間で『ムーンシャワー』のゴスペルライブの同席を約し、再び『ジャックポット』へと戻る。
posted by daydreamer at 00:09| Comment(0) | TrackBack(1) | Amstelveen Story | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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